診断のポイント
【1】他の頭頸部癌より若く,平均年齢は50歳台である。
【2】内視鏡検査で上咽頭に腫瘍を確認する。
【3】血液中EBウイルス抗体価が上昇することが多い。
症候の診かた
【1】頸部リンパ節腫脹:最も頻度が高く50~70%の症例で認められる。上頸部のリンパ節が腫脹しやすく,中頸部や後頸部が続く。無痛性の増大傾向のある腫瘤として認識される。
【2】耳症状:約50%の症例で認める。特に一側性の遷延する滲出性中耳炎として聴力低下や耳閉感をきたす。
【3】鼻症状:約30%の症例で認める。鼻閉や血性鼻漏をきたす。
【4】頭痛:頻度は低い(約10%)が重要な症候である。
【5】脳神経:頻度は低い(約10%)が重要な症候である。いずれの脳神経も障害される可能性があるが,最も多いのは外転神経障害による複視であり,三叉神経第二枝・第三枝の障害による頰部または下顎部の感覚障害や下位脳神経障害も代表的である。
検査所見とその読みかた
【1】上咽頭内視鏡検査:上咽頭に腫瘍を認める(図1図)。わずかな粘膜変化のみを呈することもあり注意を要する。
【2】頸部画像検査
❶CT:造影が望ましい。上咽頭に腫瘍を認める。傍咽頭間隙,頭蓋骨,副鼻腔,頭蓋内,下咽頭,眼窩,側頭下窩,咀嚼筋間隙などへの進展,咽頭後リンパ節や頸部リンパ節の腫脹を評価する。
❷MRI:CTと同様に上咽頭の腫瘍の局所浸潤ならびにリンパ節転移について評価する(図2図)。
❸N病期診断にはCTが,T病期診断にはMRIが有用であるとされている。
【3】血液中EBウイルス抗体価:ウイルスカプシド抗原(VCA)に対するIgGの上昇(640倍以上),IgAの上昇(10倍以上),早期抗原(EA)に対するIgGの上昇(10倍以上),IgAの上昇(10倍以上)が補助診断として有用である。
確定診断の決め手
上咽頭の腫瘍からの生検において病理組織学的検査により癌を認める。組織学