診療支援
診断

下咽頭癌
††
Hypopharyngeal Cancer
菅澤 正
(埼玉医科大学国際医療センター頭頸部腫瘍科・耳鼻咽喉科・教授)

診断のポイント

【1】早期は特徴的所見に乏しい。

【2】進行するにつれて,咽頭痛,嚥下時の耳への放散痛,血痰,嗄声,呼吸苦などの多彩な症状が急速に出現する。

【3】頸部リンパ節腫脹が初発症状の症例も少なからず存在するので注意が必要である。

【4】アルコール常用者で,風邪症状が遷延するとき,下咽頭癌も念頭におき,精査する。

症候の診かた

 飲酒,喫煙,貧血などのリスク因子の問診が重要である。漫然と診察しても見逃すことも多く,早期癌の発見は疑うことから始まる。

検査所見とその読みかた

 全身状態の評価と,原発巣進展範囲を正確に判定し,喉頭温存治療の可否を決定する。

【1】進行癌であれば内視鏡検査により容易に診断可能である。

❶梨状陥凹の唾液貯留,披裂部の発赤,浮腫が認められるときは,癌の存在を考慮し精査する。

❷梨状陥凹深部から頸部食道入口部の観察は,modified Killian's positionをとることで視認可能となることが多い。

❸耳鼻咽喉科内視鏡は解像度の点から,上部消化管内視鏡に比べて,粘膜病変の鑑別能は大きく劣っているが,狭帯域光観察(NBI)などの画像処理が標準搭載されるようになり,小病変の発見,進展範囲の評価に有用となっている(図12)。

【2】悪性が疑われるも,内視鏡で病変が確認できない場合,咽頭拭い液の細胞診も行っておく。

【3】造影CT:原発巣進展評価,頸部リンパ節転移評価は造影CTが必須である。

【4】MRI:軟部組織進展評価特に頸動脈,椎前筋あるいは頸部食道進展の判定に有用である。

【5】上部消化管内視鏡検査:治療前には必須であり,重複癌の有無の確認,下方進展例では進展範囲の正確な評価が求められる。

【6】FDG-PET:頸部リンパ節転移が初診時70%以上に認められ,遠隔転移もまれではないことから,FDG-PET検査も必須である。

確定診断の決め手

【1】内視鏡による生検が必

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