診療支援
診断

鼻・副鼻腔癌
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Nasal Cavity and Paranasal Sinus Cancer
本間 明宏
(北海道大学大学院教授・耳鼻咽喉科・頭頸部外科学)

診断のポイント

【1】片側だけの鼻閉,鼻漏,片側だけの副鼻腔炎。

【2】頻回あるいは大量の鼻出血。

【3】顔面・上歯肉などの腫脹・疼痛。

【4】眼球突出,流涙,眼球運動障害,複視などの眼の症状。

【5】さまざまなタイプの悪性腫瘍が発生するので,年齢,性別で判断しない。

緊急対応の判断基準

【1】鼻出血が止まらないときは,耳鼻咽喉科医の診察・処置が必要。

【2】鼻・副鼻腔癌を疑った場合はCT,MRIなどの検査ができる施設の耳鼻咽喉科に紹介する。

症候の診かた

【1】前鼻鏡検査

❶腫瘍が鼻腔の前方に存在する場合は確認することができる。

❷軟性ファイバースコピーによる内視鏡検査を行えば,鼻腔から上咽頭まで観察でき,この検査だけで癌を強く疑うことが可能な場合もある。

【2】顔貌の観察:頰部や外鼻の腫脹・変形がないかを観察する。また,皮膚への浸潤がある場合には皮膚の発赤がみられる。

【3】眼の検査:眼球突出,流涙の有無,眼球運動,複視の有無を確認する。

【4】口腔の観察:口蓋の腫脹,潰瘍の有無,上歯肉などの腫脹の有無を確認する。

【5】頸部の触診:頸部リンパ節転移は上頸部,顎下部を中心に10~20%の症例にみられるので触診で確認する。

検査所見とその読みかた

【1】CT(図1a)

❶単純CTのみで骨破壊,軟部組織陰影の有無が診断できる。

❷通常は,骨条件,軟部組織条件で軸位断,冠状断の2方向の画像があれば十分と思われる。必要に応じ,矢状断の画像も追加する。

❸造影剤を用いると血流が豊富な組織が濃く(白く)描出され,画像のコントラストが明瞭になり,より詳細な観察が可能となる。

❹骨破壊の有無の診断にはCTのほうがMRIよりも有用である。

【2】MRI(図1b):軟部組織の陰影を診断するにはCTよりもMRIのほうが優れる。

【3】PET/CT:鼻・副鼻腔においては炎症と腫瘍の鑑別が困難な場合もあるが,CT,MRIを補完する,あるい

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