診断のポイント
【1】尿管膀胱移行部の先天的異常を原因とする原発性膀胱尿管逆流(VUR)(図1図)と,後部尿道弁や神経因性膀胱などに伴う高圧膀胱によって二次的に生じる続発性VURは,その治療法が異なるため明確に鑑別する。
【2】小児期腎盂腎炎の基礎疾患としてはその30~50%と最も多く,近年は胎児超音波検査における腎盂拡張を契機に診断される症例が増えている。
【3】尿失禁,慢性便秘などの排泄障害は診断契機になるとともに,VURの治療成績に大きく影響するため十分に評価する。
【4】先天性水腎症などほかの先天性腎尿路異常に高率に合併し,また,約30%に同胞内発生や親子間発生が認められ家系内発生が多い。
症候の診かた
【1】腎盂腎炎に伴う発熱
❶VURの存在だけで特異的な症状を呈することはなく,尿路感染症(urinary tract infection:UTI)が唯一の症候となる場合が多い。
❷新生児期や乳児期の腎盂腎炎では不機嫌,嘔吐,哺乳不良といった症状しか現れないことも多い。
【2】超音波検査での腎盂拡張:無症候性に腎盂拡張を検出される患児の多くは尿路の通過障害(先天性水腎症,巨大尿管症など)を原因とするが,その15~20%ではVURが原因として発見される。
【3】尿失禁,慢性便秘などの排泄症状
❶原発性VUR:排泄障害の存在がUTIの再発,自然治癒や治療成績の不良に強く関与する。
❷続発性VUR:原因となる後部尿道弁や二分脊椎症では排泄症状は高頻度に出現する。
検査所見とその読みかた
【1】超音波検査
❶非侵襲的検査であり,尿路全体の形態評価が可能である。
❷腎盂尿管拡張,矮小腎など通常の異常所見からではVURの診断精度は高くないが,低・異形成腎,重複腎盂尿管,尿管瘤など合併する尿路疾患を診断できる。
【2】排尿時膀胱尿道造影検査(VCUG)(図2図)
❶VURの標準的な画像診断法である。
❷検査に伴うアーチ