診療支援
診断

特発性腎出血
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Essential Renal Bleeding
武藤 智
(順天堂大学大学院特任教授・泌尿器外科学)

診断のポイント

【1】肉眼的あるいは顕微鏡的血尿。

【2】血尿の原因となる他疾患の否定。

緊急対応の判断基準

 特発性腎出血で緊急対応が必要とされることはきわめてまれである。

【1】緊急対応が必要とされるような血尿を認めた場合,まずは悪性腫瘍などの原因となる他疾患の診断を早急に行う必要がある。

【2】自施設で診断が困難な場合には,高次医療機関へ搬送する。転院が適切と判断した場合,詳細な検査は不要。

症候の診かた

【1】血尿:血尿の訴えがあった場合でも,肉眼的か顕微鏡的か必ず確認する。

【2】他疾患を疑わせる症状の確認

❶本疾患は除外診断であり,他疾患の有無を確認する必要がある。他の血尿の原因となるような疾患に伴う症状の有無を確認すべきである。

❷発熱,疼痛(背部痛,側腹部痛),排尿時痛,体重減少などは,患者から訴えがない場合でも確認する必要がある。

検査所見とその読みかた

【1】尿沈渣:肉眼的血尿の訴えがあった症例に対しても,血尿を確認することが本疾患の診断に必須である。

【2】尿培養検査:尿沈渣で膿尿がなくとも,細菌尿の有無を確認する。

【3】尿抗酸菌培養検査:本疾患を確定診断するためには尿路性器結核症も否定する必要がある。尿中結核菌の有無を検査する。

【4】尿細胞診:尿路悪性腫瘍の否定が必須である。

【5】採血検査:特発性腎出血で白血球やCRP,プロカルシトニンなどの炎症反応の上昇を認めることはない。

【6】CT

❶血尿が確認された場合,血尿の原因となる他疾患の否定が必須である。

❷単純CT:血尿の原因となることが多い尿路結石の有無を確認するため単純CTを行う。

❸造影CT:尿路悪性腫瘍も血尿の原因である。造影CTで確認する。

❹CT urography:必要であれば行ったほうがよい。

【7】膀胱鏡検査

❶膀胱内に腫瘍や結石がないことを確認する。

❷左右どちらの尿管口から血尿があるかを確認し,出血源の左右を認識する。

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