診断のポイント
淡明細胞癌の多くでVHL遺伝子の異常を伴い,転写因子HIF-1αの細胞内蓄積を引き起こすため血管内皮細胞増殖因子(VEGF)をはじめとした低酸素誘導分子の発現が高くなる。その結果,血管の豊富な腫瘍を形成するに至る。淡明細胞癌についで多いものが乳頭状癌であり,淡明細胞癌と異なり血管の増生をみることはまれである。
【1】古典的3主徴として,腹部腫瘤,血尿,疼痛があったが,現在ではこの3つが認められる症例はごくまれである。無症状で腹部超音波検査やCTなどで偶然発見される場合が70%以上である。
【2】腎に発生する充実性腫瘍の場合,まず悪性腫瘍を考える。囊胞性病変でも隔壁や充実性部分が存在する場合には悪性腫瘍として扱う。
【3】腎細胞癌の80%以上を占める淡明細胞癌の場合,ダイナミックCTの皮髄相で不均一に造影され,実質相で正常腎実質より先に造影効果が消失する球形の腫瘍を認める。偽被膜も存在すれば,診断はほぼ確定的である。
【4】後述の腎血管筋脂肪腫との鑑別がどうしてもつかない場合には,部分切除を行うか,経皮的針生検を考慮する場合がある。
症候の診かた
【1】80%以上の症例は他の機会での画像検査で発見される偶発癌である。
【2】尿路への浸潤で肉眼的血尿を示したり,腹部腫瘤を自覚したりすることもある。
【3】後腹膜臓器であるため,直径15cmを超える大きい腫瘍となっても消化器症状を示すことはほとんどない。
【4】転移巣による症状,例えば,骨転移による疼痛や脳転移による神経症状により診断されることもある。
検査所見とその読みかた
他疾患の除外という観点から必要な検査を示す。
【1】腎血管筋脂肪腫(angiomyolipoma:AML)
❶結節性硬化症に伴うものが有名であるが孤発例も少なくない。中高年の女性に多い。
❷近年PEComa(tumours showing perivascular e