診断のポイント
【1】前立腺癌:血中の前立腺特異抗原(PSA)分子の測定が診断および治療の効果判定に必須。
【2】膀胱癌:尿中核マトリクス蛋白質(NMP)22定量や膀胱腫瘍抗原(BTA)テストが尿中分子マーカーとして保険適用であるが汎用されてはいない。
【3】腎細胞癌:VHL(von Hippel-Lindau)の体細胞遺伝子変異などの異常の頻度が高いが,有効な分子生物学的マーカーは確立していない。
【4】精巣腫瘍:αフェトプロテイン(AFP)分子およびヒト絨毛性ゴナドトロピン(hCG)分子が診断および治療の効果判定に必須。
症候の診かた
腎腫瘍(腎細胞癌)(→),膀胱腫瘍(膀胱癌)(→),前立腺癌(→),精巣腫瘍(→)の[症候の診かた]を参照。
検査所見とその読みかた
【1】前立腺癌
❶PSA:スクリーニングでは,PSA基準値は4ng/mL以下であるが,このカットオフ値は,年齢でも異なり,前立腺肥大症など前立腺のサイズに影響される〔腫瘍マーカーからみた尿路性器癌の診断(→)を参照〕。
❷PSA以外の前立腺癌特異的な分子生物学的マーカー
■前立腺特異膜抗原(PSMA):68Ga-PSMA PETなどPSMAに放射性同位元素で標識したPET検査は欧米ではすでに実臨床に使用されているが,わが国ではまだ汎用されていない。
■TMPRSS2-ERG融合遺伝子:前立腺癌特異的融合遺伝子のなかで最も頻度が高く,半数近くに認められ,特異性が高い。しかしまだ実臨床での応用はなされていない。
【2】膀胱癌
❶NMP22
■尿路上皮癌の分子生物学的診断マーカーであるNMP22は,癌細胞で発現亢進するnuclear mitotic apparatus proteinの1つで,細胞死に伴い放出される。
■スクリーニングとしての補助診断法として1回のみ保険適用となる。ただし,術後の定期的なモニタリングには適用とならない。
■感度は
関連リンク
- 今日の診断指針 第8版/腎腫瘍(腎細胞癌)
- 今日の診断指針 第8版/膀胱腫瘍(膀胱癌)
- 今日の診断指針 第8版/前立腺癌
- 今日の診断指針 第8版/精巣腫瘍
- 今日の診断指針 第8版/腫瘍マーカーからみた尿路性器癌の診断
- 今日の診断指針 第8版/前立腺肥大症
- 臨床検査データブック 2023-2024/抗p53抗体〔anti-p53 Ab〕 [保] 163点(包)
- 臨床検査データブック 2023-2024/エストロゲンレセプター [保] 720点
- 臨床検査データブック 2023-2024/ヒト精巣上体蛋白4〔HE4〕 [保] 200点(包)
- 臨床検査データブック 2023-2024/TFPI2(組織因子経路インヒビター2)《PP5(胎盤蛋白質5)》 [保] 190点(包)
- 臨床検査データブック 2023-2024/前立腺酸性ホスファターゼ〔PAP〕
- 臨床検査データブック 2023-2024/RAS遺伝子 [保]* 2,500点(包)
- 臨床検査データブック 2023-2024/マイクロサテライト不安定性(MSI)検査 [保]* 2,100点
- 新臨床内科学 第10版/2 非小細胞肺癌
- 新臨床内科学 第10版/4 消化管ホルモン産生腫瘍(消化管神経内分泌腫瘍)