診療支援
診断

尿路性器癌の分子生物学的診断
Molecular Diagnosis of Urogenital Cancers
永田 政義
(順天堂大学大学院准教授・泌尿器外科学)

診断のポイント

【1】前立腺癌:血中の前立腺特異抗原(PSA)分子の測定が診断および治療の効果判定に必須。

【2】膀胱癌:尿中核マトリクス蛋白質(NMP)22定量や膀胱腫瘍抗原(BTA)テストが尿中分子マーカーとして保険適用であるが汎用されてはいない。

【3】腎細胞癌:VHL(von Hippel-Lindau)の体細胞遺伝子変異などの異常の頻度が高いが,有効な分子生物学的マーカーは確立していない。

【4】精巣腫瘍:αフェトプロテイン(AFP)分子およびヒト絨毛性ゴナドトロピン(hCG)分子が診断および治療の効果判定に必須。

症候の診かた

 腎腫瘍(腎細胞癌)(),膀胱腫瘍(膀胱癌)(),前立腺癌(),精巣腫瘍()の[症候の診かた]を参照。

検査所見とその読みかた

【1】前立腺癌

❶PSA:スクリーニングでは,PSA基準値は4ng/mL以下であるが,このカットオフ値は,年齢でも異なり,前立腺肥大症など前立腺のサイズに影響される〔腫瘍マーカーからみた尿路性器癌の診断()を参照〕。

❷PSA以外の前立腺癌特異的な分子生物学的マーカー

前立腺特異膜抗原(PSMA):68Ga-PSMA PETなどPSMAに放射性同位元素で標識したPET検査は欧米ではすでに実臨床に使用されているが,わが国ではまだ汎用されていない。

TMPRSS2-ERG融合遺伝子:前立腺癌特異的融合遺伝子のなかで最も頻度が高く,半数近くに認められ,特異性が高い。しかしまだ実臨床での応用はなされていない。

【2】膀胱癌

❶NMP22

尿路上皮癌の分子生物学的診断マーカーであるNMP22は,癌細胞で発現亢進するnuclear mitotic apparatus proteinの1つで,細胞死に伴い放出される。

スクリーニングとしての補助診断法として1回のみ保険適用となる。ただし,術後の定期的なモニタリングには適用とならない。

感度は

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