診断のポイント
【1】乳幼児期および20~30歳台でみられる。
【2】20~30歳台男性の悪性腫瘍第1位。
【3】無痛性陰囊腫大。
【4】陰囊内容に透光性なし。
【5】肺,腹部リンパ節などへの転移から発見されることがある。
緊急対応の判断基準
多発転移を伴う精巣腫瘍はきわめて進行が早く,1~2週間以内に致死的になることさえある。泌尿器科のある高次医療機関へすみやかに紹介する。
症候の診かた
【1】無痛性陰囊腫大
❶多くは痛みを伴わず,圧痛もなく陰囊内容が腫大する。
❷急速に増大した場合や感染を伴う場合,痛みを伴うことも起こりうる。
❸腫大した陰囊内容は石様硬のことが多い。
【2】透光性
❶エコーにより充実性か囊胞性か判定できるが,より簡便には腫大した陰囊内容をペンライトなどにより透光性を見ることで判定できる。
❷充実性であれば精巣腫瘍を疑い,透光性があれば陰囊水腫など良性疾患が考えられる。
【3】女性化乳房:精巣腫瘍が産生するヒト絨毛性ゴナドトロピン(hCG)により女性化乳房をきたすことがある。
【4】腹部膨満:巨大な後腹膜リンパ節転移により腹部腫瘤を触知することがある。
検査所見とその読みかた
【1】血液検査
❶腫瘍マーカーとしてLDH,hCG,AFPが上昇しうる。
❷LDHは非特異的であるが,hCG,AFPが上昇していれば精巣腫瘍を強く疑う。
【2】画像検査
❶胸部X線
■肺転移の有無を確認することができる。
■肺転移が多発している場合はより早急な治療が必要である。
❷超音波検査
■陰囊内容の確認ができる。
■均一な正常の精巣組織が圧排あるいは消失し,モザイク状の不正なエコー像を示す。
■腹部エコーで後腹膜リンパ節の腫大,水腎,肝転移などが確認できる。
❸CT:最終的には全身CTにより転移巣を検索する。
❹脳MRI:肺転移のある症例では脳転移の検索を行っておくことが望ましい。
確定診断の決め手
【1】15~40歳の無痛性陰囊腫大。
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