診療支援
診断

神経因性膀胱
Neurogenic Bladder
松本 成史
(旭川医科大学教授・教育研究推進センターセンター長)

診断のポイント

【1】神経因性膀胱とは,中枢,末梢神経の変化が原因となって発症する下部尿路機能障害(lower urinary tract dysfunction:LUTD)の総称である。原因疾患([さらに知っておくと役立つこと]参照)の頻度に応じてその発症頻度は異なる。

【2】神経疾患の既往があり,その後に発症したLUTDを合併している場合や下部尿路症状(lower urinary tract symptoms:LUTS)を呈する場合は神経因性膀胱を想起する。

【3】LUTDとなる明らかな疾患を認めないのにLUTSを呈する場合や,残尿過多,膀胱憩室,尿路感染症,水腎症などが存在する場合は神経因性膀胱を想起する。

【4】神経因性膀胱の明確な診断基準は存在しないため,明らかな下部尿路の器質的疾患を認めなくても,何らかの神経疾患を有し,LUTSや種々の検査結果がそれに見合う場合に神経因性膀胱と診断する。

【5】下部尿路の器質的疾患を認め,その治療を行ってもLUTSが改善しない場合は,神経因性膀胱と診断される場合がある。

緊急対応の判断基準

【1】LUTDにより腎・上部尿路に影響を及ぼしている場合,および蓄尿はされているが排尿(尿排出)ができない場合:重症と判断され,専門医による緊急対応が必要となる。

【2】水腎症が存在し,腎・上部尿路機能保持が優先される場合:腎瘻造設などを要し,尿閉,著明な残尿は尿道カテーテル留置や膀胱瘻造設を考慮する。

【3】著明な腎機能障害の悪化傾向を認めるときや,尿路感染症による敗血症が疑われるとき,肉眼的血尿を認めるとき:入院を考慮する。

症候の診かた

【1】神経因性膀胱によるLUTDは,蓄尿機能障害と排尿機能障害の2つに大別される。

【2】さらに,その各々が排尿筋機能(排尿筋過活動,排尿筋低活動,低コンプライアンス膀胱)と尿道機能(尿道過活動,尿道低活動)の機能障害の組み合

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