診断のポイント
【1】60歳以上で女性に多い。
【2】咳など腹圧が加わる際の腹圧性尿失禁。
【3】過活動膀胱に伴う切迫性尿失禁。
【4】高度な排尿障害を伴う溢流性尿失禁。
【5】認知・運動機能障害に伴う機能性尿失禁。
緊急対応の判断基準
【1】溢流性尿失禁では腹部エコーで腎・膀胱を観察。
【2】多量の残尿を認め,水腎症を伴う場合は尿道カテーテルを留置し,すみやかに泌尿器科専門医に紹介する(遷延する場合は間欠導尿を導入)。
症候の診かた
【1】腹圧性尿失禁:中高年女性に多く,咳,くしゃみ,運動による腹圧上昇時に生じる。男性ではまれで,前立腺手術(前立腺全摘除術や経尿道的前立腺切除術)による括約筋損傷で生じる。
【2】切迫性尿失禁:尿意切迫感(急に起こる我慢しがたい強い尿意)とともに尿が漏れる状態で通常頻尿を伴う。
【3】混合性尿失禁:【1】【2】が合併している状態をいう。中高年女性に多くみられ,発生頻度は腹圧性,混合性,切迫性尿失禁でおよそ5:3:2。
【4】溢流性尿失禁:前立腺肥大症などの下部尿路閉塞や腰部脊柱管狭窄症,子宮癌・直腸癌術後の膀胱収縮障害のために,多量の残尿と尿の溢流(夜間遺尿も多い)がみられる。
【5】機能性尿失禁:身体運動機能・精神機能障害(認知症など)により,トイレまでの移動や正常な排尿行為ができず,トイレ以外で排尿する状態。
【6】身体所見では男性の前立腺肥大症,女性の膀胱瘤などの骨盤臓器脱の有無を確認。
検査所見とその読みかた
上記のタイプ分類と代表的症状を念頭においた詳細な問診で診断は可能。
【1】排尿日誌:排尿時刻,1回排尿量,尿失禁時刻を記録する排尿日誌(3日間程度)により病態を把握。
【2】パッドテスト:60分間,尿失禁が生じやすい動作をして失禁量を測定するパッドテスト(2g以上が有意な失禁)。
【3】腹部エコー:残尿測定(50mL以上が有意な残尿)。
【4】鎖膀胱尿道造影:尿道に