産婦人科領域における2018~2019年の診療にはいくつかの注目すべき変化があった。まず,婦人科腫瘍分野では,遺伝性乳癌卵巣癌(hereditary breast and ovarian cancer:HBOC)患者に対する維持化学療法の導入である。ポリADPリボースポリメラーゼ(PARP)阻害薬であるオラパリブは当初,HBOC発症の原因遺伝子であるBRCAに病的変異を有する卵巣癌でプラチナ感受性再発症例に対する治療薬として開発された。その後,BRCA遺伝子変異陽性の卵巣癌患者に対して,プラチナを含む初回化学療法を実施し,奏効が確認できれば,オラパリブによる維持療法を実施することが有効であるとする報告があり,今後はわが国でもオラパリブの適応を判断するコンパニオン診断として,BRCA遺伝学的検査を実施することになると考えられる。ただし,その検査に際しては患者の血縁者に対しても心理社会的影響を考慮する必要がある。
また,わが国では2018年の診療報酬改定で子宮頸癌に対する腹腔鏡下子宮悪性腫瘍手術が新たに保険適用となったが,時を待たずして開腹手術と低侵襲手術(腹腔鏡下およびロボット支援下手術)による広汎子宮全摘出術の海外での多施設大規模ランダム化比較試験の結果が「The New England Journal of Medicine」誌に掲載された。その内容は,低侵襲手術群の4.5年無病生存率・全生存率が,開腹手術群よりも劣っており,骨盤内再発の割合が多かったとするものであった。予後に差が認められた原因については明らかではないため,わが国では低侵襲手術の影響について再検討を行うこととなった。
女性ヘルスケア分野においては,子宮筋腫に対するさまざまな薬物療法が開発されたことである。従来は治療薬としてGnRHアゴニストが用いられてきたが,2019年に世界に先駆けてわが国で初めて経口
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