診断のポイント
【1】罹患数は,性器クラミジア感染症,性器ヘルペスウイルス感染症,尖圭コンジローマ,淋菌感染症の順である。ただし近年,梅毒が世界的に大流行している。国内では先天梅毒まで増加している。梅毒を念頭においた診断が必須である。
【2】女性では症状が乏しく,受診されにくい。受診しても検査が実施されず,見逃されやすい。
【3】感染部位が生殖活動や妊娠出産に直接的にダメージを与える。
【4】母子感染症につながる。特に,梅毒,性器ヘルペスウイルス感染症,尖圭コンジローマ。
【5】急性腹症では,クラミジア,淋菌による骨盤内炎症性疾患を考慮。
緊急対応の判断基準
【1】腹腔内に感染が波及すると骨盤内炎症性疾患や肝周囲炎となる。腹腔内に上行感染したものは,子宮頸管検体による病原体診断法では検出できないことがある。クラミジア,淋菌を念頭においてすみやかな抗菌薬治療を行う。
【2】骨盤内炎症性疾患は不妊,異所性妊娠を続発するため,子宮頸管炎の段階で治療開始することが肝要である。
【3】梅毒は有症状で受診した際に必ず梅毒抗体検査を実施する。無症候性でも,潜伏梅毒の可能性を念頭において梅毒抗体検査を実施する。
症候の診かた
【1】潰瘍性病変:性器ヘルペスウイルス感染症と梅毒(硬性下疳:第1期梅毒)が重要である。鑑別診断としては,急性外陰潰瘍,Behçet病,外陰癌などの悪性腫瘍が挙げられる。
【2】隆起性病変
❶ヒトパピローマウイルス(HPV)6/11型感染によってできる尖圭コンジローマ(図1図),もしくは,梅毒による扁平コンジローマ(第2期梅毒)(図2図)のいずれかを念頭におくべきである。
❷尖圭コンジローマ,梅毒ともに,女性罹患者の大部分は10~20歳台に集中している。
【3】帯下増量・性器出血:性器クラミジア感染,淋菌感染症を念頭におく。
❶クラミジア:感染後1~3週間で子宮頸管炎を発症する。子宮頸管炎では,帯下
関連リンク
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- 今日の診断指針 第8版/外陰癌/潰瘍・外陰炎
- 今日の診断指針 第8版/Behçet病
- ジェネラリストのための内科診断リファレンス/2 クラミジア感染・淋菌感染
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- 臨床検査データブック 2023-2024/梅毒
- 今日の治療指針2023年版/性感染症【婦人科】
- 新臨床内科学 第10版/8 性感染症
- 新臨床内科学 第10版/1 梅毒
- 今日の治療指針2023年版/性感染症
- 新臨床内科学 第10版/(1)単純ヘルペスウイルス感染症
- 今日の小児治療指針 第17版/淋菌感染症
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