診断のポイント
【1】主に月経痛や慢性痛などの疼痛や不妊などを主訴とすることが多い。
【2】痛みなどの症状がなくても,子宮内膜症性卵巣囊胞(いわゆるチョコレート囊胞)を認めることがある。
【3】内診上,子宮の可動性の制限,子宮後屈,Douglas窩,仙骨子宮靱帯の硬結や圧痛,卵巣の腫大を高率に認める。
【4】エストロゲン依存性の疾患のため,主に初経から閉経までの間で有症状であり,月経のある期間において,徐々に症状が進行,増悪する。
【5】確定診断は,腹腔鏡や開腹手術での腹腔内所見で行うが,月経に伴う症状や内診所見,超音波検査,MRIの結果から臨床子宮内膜症として取り扱うことも多い。
緊急対応の判断基準
【1】時に月経痛が重度となり,激痛のために緊急搬送される場合がある。
【2】卵巣囊胞の破裂や感染のために急性腹症を呈する場合がある。緊急手術が必要となることがある。
症候の診かた
【1】疼痛:月経痛,月経時以外の慢性痛,性交痛,排便痛などを訴える。特に,年齢とともに痛みの程度が増してきている場合には,子宮内膜症の可能性も考える。
【2】不妊:不妊患者の30~60%に子宮内膜症を合併している。挙児の希望の有無は,本疾患の治療方針を決めるうえで非常に重要である。
検査所見とその読みかた
【1】超音波検査
❶経腟超音波検査をまず行うべきである。
❷チョコレート囊胞が存在する場合には,卵巣の腫大が確認され,内部に貯留した血液の濃度により,さまざまな輝度を示す。
❸性交経験がない場合には,経肛門的に超音波検査を行うことで,骨盤内の検査を十分に行うことができる。
【2】MRI
❶MRIは,特に卵巣囊胞が存在する場合の診断に有効である。MRIによって囊胞内容液の成分を推定することで,ほかの卵巣囊胞と鑑別することができる。
❷チョコレート囊胞では,T1強調画像で高信号を呈し,脂肪抑制で抑制されない。
【3】血清CA125値
❶血清中