診断のポイント
【1】月経前3~10日の黄体期に続く精神的・身体的症状が月経発来とともに減退・消退する。
【2】精神的・身体的症状が過去の月経周期で2回以上繰り返し認められる。
【3】思春期から性成熟期の女性に多くみられる。
【4】精神的症状が重度の場合は,月経前不快気分障害(premenstrual dysphoric disorder:PMDD)を疑う。
症候の診かた
以下の症状が周期的に繰り返し(連続して2周期以上)出現することが重要な所見である。
【1】精神的症状:イライラ,不安感,怒りっぽくなる,落ち着かない,憂うつ,やる気の低下,不眠,食欲増進。
【2】身体的症状:下腹部膨満感,疲労感,下腹部痛,腰痛,頭重感,頭痛,乳部痛,ホットフラッシュ,めまい。
検査所見とその読みかた
【1】基礎体温測定
❶基礎体温表に,精神的・身体的症状が発現した時期を記入させる(即時的記録)。
❷症状が黄体期に出現しているかどうか確認する。
【2】ホルモン検査
❶月経前症候群(PMS)患者のゴナドトロピン〔黄体形成ホルモン(LH),卵胞刺激ホルモン(FSH)〕や卵巣ステロイドホルモン(エストロゲン,プロゲステロン)は正常値を示す。
❷更年期症状との鑑別にはFSHとエストロゲン測定が有用である。
❸甲状腺疾患との鑑別にはTSH測定を行う。
確定診断の決め手
精神的・身体的症状の出現時期が黄体期であり,月経発来とともに減退し消失することを患者自身が即時的に記録し,それらの症状の発現を前向きに確認する。
誤診しやすい疾患との鑑別ポイント
鑑別診断として重要なものは,PMDD,月経困難症,うつ病,不安障害,慢性疲労症候群(→),甲状腺疾患である。
【1】PMDD:PMSと比べ精神的・身体的症状(精神的>身体的)が重度であり,日常生活に支障をきたす状態である。
【2】月経困難症:月経困難症は月経開始日に始まる症状が主体であり,PMS