診断のポイント
【1】流産
❶妊娠週数に比して血清・尿中ヒト絨毛性ゴナドトロピン(hCG値)が低い。
❷超音波所見の経時的変化がない,もしくは胎児心拍が消失。
【2】不育症
❶不育症は,繰り返しの妊娠の不成功のため健児を得られない状態を指す。
❷不育症のなかで,流産の繰り返しが2回の場合を反復流産,3回以上の場合を習慣流産とよぶ。
症候の診かた
【1】流産
❶出血
■妊娠12週未満の流産では先に胚・胎児の発育が停止し,そのあとに妊娠組織の自然排出が生じる状況で出血が生じる場合が多い。
■妊娠12週以降では妊娠が継続している状態で感染,子宮頸管無力症,絨毛膜下血腫などの原因により子宮収縮,子宮口開大が生じて出血を伴う場合もある。
❷下腹痛:流産に伴う子宮収縮,妊娠組織の排出により下腹部痛が生じることが多い。
【2】不育症
❶抑うつ・不安:妊娠の不成功の繰り返しによりカップルに抑うつ・不安が生じることが多い。
検査所見とその読みかた
【1】流産
❶hCG検査値による評価
■妊娠3週後半~4週にかけて尿中にhCGが検出される。その後,急激にhCG値が増加して妊娠9週頃にピークを迎える。血清hCG値が1,500~2,000IU/Lで子宮内に胎囊が確認されることが多い。
■hCGがいったん陽性となりその後超音波検査で子宮内に胎囊が確認できず消失する場合には生化学的妊娠とよび,臨床的妊娠の回数には含めない。
■月経周期が不順である場合には最終月経から推定される妊娠週数とのずれが生じるため,hCG値の継時的推移を手がかりに生化学的妊娠もしくは流産の診断が必要となる場合がある。
❷超音波検査による評価
■妊娠5週以降は経腟超音波法で子宮内に胎囊が確認され,6週で胎児心拍が確認される。
■妊娠8~10週では胎児心拍とともに週数に一致した胎児の頭殿長の変化,妊娠12週以降は週数に相当する児頭横径により胎児の順調な変化を確認する。
■こうした