診断のポイント
【1】胎児の推定体重が該当週数の標準的な胎児体重に比較して明らかに少ない。
【2】診断の目安は胎児推定体重が胎児体重基準値の-1.5SD以下。
【3】妊娠週数の再確認を行う。
【4】推定体重の再測定と経時的変化を考慮して診断する。
【5】原因となる胎児因子(先天奇形や染色体異常),胎児付属物因子(胎盤・臍帯異常),母体因子(合併症,感染,環境)を検索する。
症候の診かた
【1】お腹が小さい:妊娠週数に比してお腹が小さく,子宮底長が低値の場合は胎児発育不全(FGR)を疑い,胎児計測を行う。
【2】母体体重増加不良:母体体重増加不良はFGRの原因の1つであり,認めた場合はFGRに注意する。
【3】母体高血圧:妊娠高血圧症候群はFGRの原因の1つであり,認めた場合はFGRに注意する。
検査所見とその読みかた
【1】胎児計測
❶腹部超音波診断装置を用いて,胎児の児頭大横径(BPD),腹囲(AC),大腿骨長(FL)を計測して胎児推定体重と胎児体重基準値のSD値を求める。
❷FGRを疑う場合や通常の妊婦健診でも妊娠30週頃までに行う。
❸現在,超音波診断装置には日本超音波医学会が公示した「超音波胎児計測の標準化と日本人の基準値」(2003年)を用いた胎児体重推定式と胎児体重基準値(表1図)が組み込まれている。胎児体重基準値の-1.5SD以下はFGRを疑う。
❹必要に応じて再検する。
【2】胎児の精査
❶胎児超音波検査により心奇形などの胎児の形態異常の有無を精査する。
❷FGRの約10%に胎児形態異常を認める。
❸複数の胎児形態異常を認める場合は染色体異常の存在も疑われるので,染色体検査も考慮する。その際は遺伝カウンセリングを行う。13トリソミー,18トリソミーの胎児の多くはFGRを示す。
【3】感染症検査
❶FGRをきたす母体感染症にはTORCH症候群がある。
❷妊娠経過中に発熱・発疹の既往があった場合や胎児の脳