診療支援
診断

常位胎盤早期剝離
Placental Abruption
青木 茂
(横浜市立大学附属市民総合医療センター総合周産期母子医療センター・准教授)

診断のポイント

【1】腹痛,外出血,子宮の圧痛が3徴(出血を伴わないケースも多く症状がきわめて多彩)。

【2】妊娠後半期に好発する。

【3】妊娠高血圧症候群,常位胎盤早期剝離(以下,早剝)の既往,切迫早産(前期破水),腹部打撲などがリスク因子。

【4】胎児死亡,母体播種性血管内凝固症候群(disseminated intravascular coagulation:DIC)の併発。

緊急対応の判断基準

【1】腹部打撲などの外傷や腹痛に出血,胎動減少などを伴う際には,早剝の可能性を考慮し,産婦人科の受診を勧める。

【2】胎児心拍モニタリングで異常パターンを認め早剝と診断したならば,すみやかな分娩が必要となる。自院で対応困難な場合には,高次医療施設にすみやかに搬送する。

【3】胎児死亡例では,母体DICを高頻度に合併するため,1次施設での対応は困難なことが多く,高次医療施設における分娩(経腟分娩または帝王切開術)が望ましい。

症候の診かた

【1】切迫早産様徴候

❶早剝の診断は,性器出血や腹痛を訴えた患者に早剝を疑うことから始まる。

❷切迫早産様症状(性器出血,下腹部痛,子宮収縮)に加え,胎児心拍数モニタリングで異常パターンが観察された場合には早剝の可能性を考慮する。

【2】母体DIC

❶早剝では消費性凝固障害により急速にDICへ移行することが多い。

❷DIC症例では,新鮮凍結血漿をはじめとした凝固因子の補充が不可欠である。

検査所見とその読みかた

【1】胎児心拍数モニタリング:子宮収縮および胎児健常性の評価を行う。

【2】超音波検査:胎盤後血腫の検出に有用であるが,超音波による早剝の診断は,陰性的中率が低いため,超音波検査が陰性でも早剝を否定してはならない。

確定診断の決め手

 確定診断は,分娩時の胎盤後血腫の存在による肉眼的診断で行う。

誤診しやすい疾患との鑑別ポイント

【1】切迫早産()

❶この鑑別が特に重要である。

関連リンク

この記事は医学書院IDユーザー(会員)限定です。登録すると続きをお読みいただけます。

ログイン
icon up
あなたは医療従事者ですか?