診療支援
診断

血液型不適合妊娠
Pregnancy with Blood Type Incompatibility
関沢 明彦
(昭和大学教授・産婦人科学)

診断のポイント

【1】妊娠初期に血液型(ABO,Rh血液型)検査と不規則抗体スクリーニング(間接Coombs試験など)を行い,不規則抗体が陽性の場合には血液型不適合妊娠として扱う。

【2】妊婦がRh(D)陰性で,パートナーがRh(D)陽性の場合にも血液型不適合妊娠として扱う。

【3】不規則抗体が検出された場合,どの抗原に対する抗体であるか(抗体の特異性)を同定するとともに,その抗体がIgG抗体かIgM抗体かの鑑別と抗体価の測定を行う。

【4】IgG抗体は経胎盤的に能動輸送されるため抗体価の測定を4週に1回程度行い,抗体価の上昇がないことを確認する。

【5】不規則抗体の種類(特異性)によって,胎児・新生児溶血性疾患を引き起こす可能性は異なり(表1),それぞれの抗体の特色を知ったうえで不規則抗体陽性の妊婦は周産期管理されるべきである。

検査所見とその読みかた

【1】抗体特異性の同定

❶IgM抗体:胎盤通過性はないため,胎児への影響はない。

❷IgG抗体

胎児に移行して胎児溶血・貧血を引き起こす可能性があるため,IgG抗体価を測定。

可能な施設においては,❶と併せて夫赤血球と交差試験を行い,妊婦保有の抗体が夫(胎児の父親)の抗原に反応するものかを判定する。

一般的に夫赤血球に反応する抗体でなければ,この抗体は過去の免疫記憶と判断できる。しかし,胎児が遺伝学的に夫の児でない場合もあるので配慮が必要である。ABO血液型不適合により,児に重症溶血性疾患を引き起こしうるのは母親がO型で児がA型かB型の場合に限られる。

【2】抗体価の評価

❶妊婦健診で抗体価の上昇の有無を確認する。不規則抗体が陽性であれば,抗体価の推移を妊娠経過中に定期的に評価する。

❷前回妊娠時に感作によって児に溶血性疾患を発症した既往のある場合には,抗体価測定による経過観察は役立たない。

❸抗体価は施設ごとに絶対値が異なるため,同一の検査機関

関連リンク

この記事は医学書院IDユーザー(会員)限定です。登録すると続きをお読みいただけます。

ログイン
icon up
あなたは医療従事者ですか?