診療支援
診断

産科播種性血管内凝固症候群
Obstetrical Disseminated Intravascular Coagulation (DIC)
板倉 敦夫
(順天堂大学大学院教授・産婦人科学講座)

診断のポイント

【1】止血困難なサラサラした出血。

【2】播種性血管内凝固症候群(DIC)基礎疾患〔常位胎盤早期剝離(早剝),羊水塞栓症,DIC型後産期出血〕の有無。

【3】産科DICスコアによる診断(表1)。

緊急対応の判断基準

【1】DIC基礎疾患(早剝,羊水塞栓症,DIC型後産期出血)があれば高率に発症する。

【2】産科DICが疑われたら,血液凝固検査の結果を待たずして,産科DICスコア8点で抗DIC治療を開始する。

【3】直ちに凝固因子の補充が必要なため,自施設で管理できない場合には,高次施設へ搬送を考慮する。

症候の診かた

【1】止血困難な大量出血,止血・縫合後の創面からの出血。

【2】DIC基礎疾患に伴う症候

❶早剝:Couvelaire徴候。

❷羊水塞栓症:浮腫状に腫大した子宮,破水後突然発症する呼吸困難・意識消失・ショック。

【3】膿盆などに溜まった血液に凝血塊ができない。

【4】DICの進行とともに子宮弛緩が進行するため,出血とともに子宮が軟らかくなる。

検査所見とその読みかた

【1】血中フィブリノゲン値の低下(<150mg/dL)が最も重要であり,プロトロンビン時間(PT),活性化部分トロンボプラスチン時間(APTT)の延長,Dダイマーの上昇がみられる。

【2】経腟分娩では出血量が正確に計測できず,また出血が速く輸液による補充が不十分となってヘモグロビン(Hb)は病勢を反映しないことが多いため,循環血液量(出血量)はショックインデックスで評価する。

【3】血小板数の低下は軽度であることも多い。

【4】産科DICスコア(表1)

❶基礎疾患,臨床症状,検査と3項目に分かれている。

❷基礎疾患は1項目のみ選択でき,臨床症状,検査は新たな症状,明らかとなった検査値に応じて加点していく。

❸8点以上となったら,抗DIC治療を開始し,13点以上なら産科DICと診断する。

確定診断の決め手

【1】産科DICスコ

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