診療支援
診断

胎児奇形・先天異常
Fetal Malformation
室月 淳
(東北大学教授・胎児医学/宮城県立こども病院・産科科長)

 胎児奇形あるいは先天異常の定義には,形態異常・機能異常に加えて胎生期の環境など外的要因まですべてを含むとする考え方もあるが,ここではICD-11の第20章で挙げられている「先天奇形,変形および染色体異常」を扱う。

診断のポイント

【1】超音波検査により胎児の形態異常を丹念に探り,複数の徴候から疑われる先天異常症候群を絞りこんでいく。

【2】確定診断のために胎児CTや胎児MRIといった画像診断や羊水染色体検査を行う。

【3】必要に応じてマイクロアレイ染色体検査や全エクソン検査といった網羅的遺伝子検査に進む。

【4】従来外因によるものと考えられてきた局所の病変も,遺伝子異常であることが明らかになってきている。遺伝子異常家族歴や妊娠分娩歴の丁寧な聴取は診断の役に立つことが多い。家族歴を正確に把握するためには家系図を作成することも必要である。

症候の診かた

【1】出生後の奇形徴候の用語やその定義

❶米国人類遺伝学会のコンセンサスでは,「頭部と顔」「眼窩周囲領域」「鼻と人中」「外耳」「口唇,口,口腔内領域」「手足」の6つの部分にまとめられている。

❷われわれが眼で見た印象としての「顔つき」は奇形症候群の診断に大きな役割を果たしていて,上記の米国人類遺伝学会の基準では「頭部と顔」だけでも70徴候にものぼる。

【2】Dysmorphology的な身体所見の把握

❶一般の奇形や先天異常の診断のためには,いわゆるdysmorphology的な身体所見の把握に加えて,各種臨床検査や画像診断を組み合わせて行い,必要に応じて遺伝子や染色体の解析に進むことになる。

❷Dysmorphology的に評価された所見は基準が明確でなく,また数字で評価するのが困難な場合が多いため,ある程度の経験が必要とされることが多いが,dysmorphologyを通して得られる知識と経験は出生前診断にも応用可能であり,むしろ積極的に応用すべき

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