診療支援
診断

■新生児疾患の最近の動向
岡 明
(東京大学大学院教授・小児科学)


 新生児周産期医療に大きな影響を与えているのが出生前診断であり,現在,革新的な技術が出現するなかで多面的な議論が行われている。

 さまざまな出生前診断があるが,例えば先天性心疾患のなかでも出生後すぐに心不全症状を呈するcritical congenital heart diseaseとされる疾患群では,出生前に胎児心臓超音波検査で構造的な異常を診断することにより出生後の治療の準備をすることで予後が改善される。定期の妊婦健診で胎児の心臓の異常が疑われた場合には,専門医による胎児の心臓の評価が保険適用にもなっている。先天性横隔膜ヘルニアや臍帯ヘルニアなどの先天性疾患では,胎児期に形態的な診断を行い,外科チームの準備が整った施設で帝王切開による分娩を行い,生後すぐに計画的な外科的介入を行うなどの治療が重要である。こうした適切な治療計画のための出生前診断は,従来から産婦人科や小児科,新生児科,小児外科,心臓外科などの外科との連携のためにも重要視されてきている。

 一方で,染色体異常や遺伝性疾患の出生前診断が社会的な注目を集めている。背景には妊婦の年齢の高齢化の進行があり,一般に高年妊娠とされる35歳以上の妊娠がすでに約30%であり,40歳以上の妊婦が5%にもなっている。高年妊娠は染色体異常のリスク因子であり,従来は妊娠15~18週頃に,腹壁から穿刺して羊水を採取し培養による染色体検査が希望者に対して行われてきたが,早産を誘発しうるなど侵襲性があった。

 2011年に開発された母体血中に含まれる胎児由来のDNA断片を解析するNIPT(無侵襲的出生前遺伝学的検査:non-invasive prenatal genetic testing)では,母体への負荷は採血のみであり,そうした状況に大きな変化をもたらした。染色体異常のなかでも頻度の高い21番,18番,13番染色体のトリソミーのリスク診断

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