診療支援
診断

新生児の分娩外傷
Birth Injury
内山 温
(東海大学教授・専門診療学系小児科学)

診断のポイント

【1】頭頸部外傷,骨折,神経損傷の3つの観点から診察する。

【2】頭頸部の腫瘤・腫脹の有無。

【3】四肢の自発運動の左右差の有無。

【4】啼泣時の顔面非対称の有無。

【5】手掌把握反射・Moro反射の有無。

緊急対応の判断基準

【1】帽状腱膜下血腫:出血が徐々に広がり,生後数時間たってから出血性ショックに陥ることがある。その場合には緊急対応が必要となる。

【2】頭蓋内出血,頭蓋骨骨折:経過観察でよい場合が多いが,midline siftをきたすような大量出血の場合には緊急対応が必要となる。

症候の診かた

【1】分娩経過の確認:吸引分娩,鉗子分娩,肩甲難産,骨盤位分娩,早産での分娩の有無などを確認する。これらの分娩では分娩外傷の頻度が高くなるからである。

【2】頭頸部腫瘤:産瘤,頭血腫,帽状腱膜下血腫などが鑑別診断として挙げられる。

【3】四肢の自発運動の左右差:長管骨骨折の可能性がある。上肢の場合,腕神経叢麻痺の可能性もある。

【4】触診による鎖骨の動揺:鎖骨骨折を疑う。

【5】一側の手掌把握反射・Moro反射などの減弱や消失:腕神経叢麻痺・長管骨骨折などを疑う。

【6】けいれん・易刺激性:頭蓋内出血の可能性がある。低血糖,電解質異常,中枢神経系感染症などを除外する。

検査所見とその読みかた

【1】単純X線写真:骨折線の有無を確認する。

【2】頭部超音波検査:早産児に多い脳室内出血の診断に有用。出血部位が高エコーに描出される。

【3】頭部MRI:硬膜下出血,くも膜下出血,硬膜外出血,脳室内出血,帽状腱膜下血腫などの診断に有用。

❶T1強調画像,T2強調画像に加えてT2強調画像を組み合わせて診断する。T2強調画像では,出血部位が低信号となる。

❷産瘤や頭血腫も診断可能であるが,これらは治療を要する疾患ではないため,通常画像検査は実施しない。

【4】頭部CT:頭蓋骨骨折の診断に用いられる。頭蓋内出血の

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