診断のポイント
【1】2歳以下の不明熱。
【2】幼児期以降の発熱に伴う腰背部痛や意識障害。
【3】排尿異常(尿勢低下,尿線途絶,排尿痛)。
症候の診かた
【1】発熱
❶上部尿路感染症(UTI):必発であるが,39℃を超えないこともある。
❷下部UTI単独:発熱はない。
【2】疼痛
❶上部UTI:幼児期以降は腹痛,腰背部痛,叩打痛,恥骨上部圧痛を訴える。上部UTIの特殊型である急性巣状細菌性腎炎では,意識障害を伴う高熱で発症することがある。
❷下部UTI:排尿痛や頻尿がある。
【3】その他
❶乳児の上部UTI:不機嫌,哺乳不良,嘔吐を伴うが,けいれん,大泉門膨隆,発疹はない。
❷排尿自立以降の下部UTI:膀胱刺激症状に加えて,尿失禁と便秘が診断の参考になる。
検査所見とその読みかた
【1】尿検査
❶カテーテル尿か中間尿を材料とする。
❷尿試験紙で白血球反応と亜硝酸塩の両方が陽性の場合は,UTIの診断が可能である(尤度比 25,95%信頼区間 17~46)。
❸尿沈渣ではWBC 5/HPF以上が膿尿の目安であるが,膿尿の存在は必須ではない。
❹急性巣状細菌性腎炎では,尿β2 ミクログロブリン値が著増する。
【2】スクリーニング検査:末梢血白血球数の増加と核の左方移動,血清CRPの高値がみられる。
【3】尿培養
❶カテーテル尿を材料とする。単一菌種が104/mL以上であれば有意と考える。
❷尿路奇形や免疫異常などの基礎疾患がない初発の上部UTIの原因菌の約80%がEscherichia coli,約10%がEnterococcus属である。
❸基礎疾患がある,UTIの既往があるなどの場合は,Pseudomonas aeruginosaの可能性が高くなる。
【4】画像
❶腎膀胱超音波検査
■乳児の不明熱では全例に行うべきである。
■腎内の炎症部位の同定には熟練を要する。
■基礎疾患になる尿路の閉塞性病変を同定することが目的である。
■下部U