診断のポイント
【1】急性発症。
【2】嘔気・嘔吐,激しい腹痛,粘血便を伴う下痢,発熱。
【3】生卵や卵加工品,肉,生野菜の摂食歴と関連性が高いと疑われる食品の摂食から6~72時間(通常12~36時間)後の発症。
【4】カメやイグアナなどの爬虫類や両生類,イヌ,ネコ,ハムスターなどの飼育歴。
【5】同時期の家族内発症(食中毒の場合)。
緊急対応の判断基準
けいれんや意識障害を伴う場合には,脳症や髄膜炎の合併が疑われるため,集中治療管理が可能な施設への搬送を考慮する。
症候の診かた
【1】腹痛は主に臍周辺から右下腹部を中心に認められる。
【2】発熱を伴うことが多いが,乳児では微熱や発熱を伴わないこともある。
検査所見とその読みかた
【1】便培養検査:必ずサルモネラ感染症を疑っていることを検査室に伝え,選択培地を使用して培養を行う。
【2】血液培養検査:サルモネラ感染症の1~5%で菌血症を伴うため。
【3】血液検査:白血球増多,CRPなどの炎症反応高値を示すことが多い。
確定診断の決め手
【1】便培養,血液培養からサルモネラ菌が分離された場合に,診断を確定する。
【2】腸管外合併症を伴う場合には,感染局所の細菌培養からサルモネラ菌が分離された場合,診断を確定する。
誤診しやすい疾患との鑑別ポイント
【1】カンピロバクター腸炎:カンピロバクターは,便の直接塗抹鏡検検査でらせん状の細菌として認められるため,鑑別に有用である。
【2】O-157などの腸管出血性大腸菌感染症(→)
❶便培養から大腸菌が分離された場合に,ベロ毒素産生性を調べることで鑑別が可能となる。
❷溶血性尿毒症症候群(→)(溶血性貧血・血小板減少・急性腎機能障害)の合併に留意する。
【3】ウイルス性胃腸炎
❶胃腸炎のなかで最も頻度が高く鑑別が必要となるが,一般的に血便は伴わない。
❷血液検査で白血球増多がなく,炎症反応も正常~軽度上昇。
確定診断がつかないとき試みる
関連リンク
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