診療支援
診断

水頭症
Hydrocephalus
坂本 博昭
(大阪市立総合医療センター小児脳神経外科・教育顧問)

診断のポイント

【1】水頭症とは種々の原因で髄液が頭蓋内(主に脳室内)に異常に貯留し,頭蓋内圧亢進や脳室拡大による脳障害をきたす疾患である。

【2】原発性と続発性(脳腫瘍,先天性疾患など)がある。

【3】原発性や先天性の多くは乳幼児期に発症するが,脳腫瘍に伴う場合はどの年齢でも発症する。

【4】水頭症による頭蓋内圧亢進の症状や所見に伴って画像検査で脳室拡大を認めれば容易に診断が可能。続発性では基礎疾患の症候が加わる。

【5】繰り返す嘔吐の原因として,まれであってもすみやかに画像検査を行って鑑別すべきである。

緊急対応の判断基準

 急速に進行する意識障害ではグリセロールやマンニトールの投与,けいれん重積では止痙を直ちに行い,緊急の頭部CTを施行して脳神経外科を受診。治療が遅れれば生命にかかわる。

症候の診かた

【1】水頭症による頭蓋内圧亢進の症候

❶症状

反復性の噴出性嘔吐(感染性腸炎よりも長い期間で,感染の所見はない),年長児では頭痛や複視の訴え,活動性の低下,無熱性のけいれん,傾眠傾向などの意識障害など。

数日~数か月の経過で進行性に悪化。

❷所見

乳児では大泉門部の緊張,膨隆とともに大頭や頭囲の異常増大(図1;頭囲の標準曲線内でも短期間で急速な増大も含む),発達遅滞や退行,眼球運動障害や著明な脳室拡大例での落陽現象,進行すれば意識障害。

乳児では大頭以外に頭蓋内圧亢進の症候が出にくく診断が遅れる。

【2】続発性水頭症の基礎疾患による症候

❶脳腫瘍,くも膜囊胞:歩行障害や片麻痺など。

❷脳出血:突然の発症が特徴的で,片麻痺など。

❸先天性疾患(脊髄髄膜瘤,脳瘤,脳形成異常など),髄膜炎,頭部外傷:それぞれの疾患に特徴的な病歴や症候。

検査所見とその読みかた

【1】画像検査の目的:脳室拡大の評価と水頭症の基礎疾患の検索。

【2】画像検査法

❶超音波エコー検査

乳児の大泉門部から検査。

脳深部の描出には適さない

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