診断のポイント
【1】生後1か月以内に徐々に始まる肝内胆汁うっ滞(cholestasis)を主徴とする肝炎で,病理組織学的には巨細胞性肝炎の像(giant cell hepatitis)を特徴とする原因不明の疾患。
【2】まず除外診断が重要であり,除外すべき主な疾患を表1図にまとめた。
【3】現在では除外診断しても診断ができないものをINHとよんでいる。
【4】低出生体重児,男児にやや多い。
症候の診かた
【1】生後1か月頃から黄疸や便尿色の異常に気付かれ,比較的早期から脂溶性ビタミンK・Dの欠乏がみられる。時にビタミンK欠乏による頭蓋内出血で発症することもある。
【2】体重増加不良(低血糖は低出生体重児にしばしばみられる),肝腫大,脾腫がみられる。
【3】直接ビリルビン高値,トランスアミナーゼ上昇,血清総胆汁酸高値,γ-GTP高値などがみられる。
検査所見とその読みかた
【1】血清直接ビリルビン値の上昇,肝機能検査(ALT,AST,γ-GTP,胆汁酸,PT活性など)の異常がみられる。
【2】α-フェトプロテイン(AFP)は乳幼児期には生理的に上昇することがあるが,INHではさらに上昇する。
確定診断の決め手
【1】腹部超音波検査では胆道閉鎖症と異なり,胆囊が描出される。
【2】肝病理所見は重要であり,約3分の1の症例では肝細胞が巨細胞化し,いわゆる巨細胞性肝炎の状態である。
【3】図1図に典型的なINHの組織像を示す。
誤診しやすい疾患との鑑別ポイント
【1】胆道閉鎖症
❶血液検査のみでは鑑別は困難である。
❷胆道シンチグラフィーは有用であり,胆道閉鎖症では腸管への排泄が全くみられない。
❸開腹胆道造影で肝外胆道の閉塞が確認される。
【2】Alagille症候群
❶肺動脈狭窄による心雑音が聞かれる。
❷年長児になると特徴的な顔貌になる。
❸肝組織では小葉間胆管の低形成がある。
【3】進行性家族性肝内胆汁うっ滞症:家族歴と
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