診断のポイント
【1】不明熱(特に乳幼児)。
【2】皮疹。
【3】骨痛および骨透亮像。
【4】尿崩症の併発。
緊急対応の判断基準
乳幼児例で播種性血管内凝固症候群や高度の骨髄抑制を伴う例では,適切な支持療法を行いながら,すみやかに化学療法を開始する必要があるため,専門医療機関での治療開始が望ましい。
症候の診かた
【1】皮疹(図1図)
❶全症例の約50%,乳幼児例では特に高頻度にみられる。
❷皮疹の性状は汗疹様丘疹,点状出血様,脂漏性湿疹様,潰瘍形成などさまざまである。
❸多臓器型の一症状であることも多く,他臓器病変のスクリーニングが不可欠である。
【2】骨病変
❶最も多くの症例にみられ,無症状の例も多いが,時に疼痛を伴う。
❷病的骨折を伴う例もあり,単純X線写真やCTによる精査が重要である。
【3】難治性耳漏
❶側頭骨病変を伴う例に散見される。
❷乳幼児の難治性中耳炎の症例では本疾患の可能性を考慮し,画像検査が推奨される。
【4】発熱:乳児期の多臓器型ではしばしば発熱を伴い,不明熱の鑑別疾患として重要である。
【5】尿崩症
❶多くはLangerhans細胞組織球症(LCH)の診断後数年の経過で合併するが,初発時にみられる症例もある。
❷頭部MRIによる精査が推奨される。
❸下垂体前葉機能低下の合併も時にみられるため,注意を要する。
検査所見とその読みかた
【1】血液検査
❶白血球増多や炎症反応の上昇がみられる例が多いが,非特異的所見である。
❷多臓器型では,浸潤臓器によって,貧血や血小板減少といった造血不全,肝逸脱酵素上昇,低蛋白血症など多彩な異常がみられるが,疾患特異的な検査異常はない。
【2】画像診断:単純X線写真による骨透亮像,特に頭蓋骨の円形の打ち抜き像の診断的価値は高い。
確定診断の決め手
病変部の生検によるCD1aまたはLangerin(CD207)陽性組織球の集簇が証明されれば診断は確定する。