診療支援
診断

乳児栄養障害
Malnutrition in Infants
工藤 孝広
(順天堂大学准教授・小児科学講座)

診断のポイント

【1】身体が必要としている栄養素と,摂取している栄養素のバランスが崩れ,必要栄養素の摂取不足に陥っている状態である。栄養素摂取不足,消化吸収不良,カロリー消費過多の状態に分けられる。

【2】成長曲線をプロットし,体重増加不良がないか確認する。また,基礎疾患がないか検索する。

【3】摂取しているカロリーが1日どの程度かを聴取し,年齢や体重に見合った栄養素であるか確認する。

【4】Kaup指数=体重(kg)÷身長(cm)2×104を計算し,22以上で太りすぎ,19~22で太り気味,15~19が正常,13~15でやせ,10~13で栄養障害,10以下で消耗症と判断する。

症候の診かた

【1】栄養障害の鑑別

❶乳児栄養障害の多くは生後8週間以内に臨床所見が出現する。乳児栄養障害をきたす疾患や病態を表1に記載した。

❷栄養障害の鑑別で必要なことは,1日の摂取カロリーがどの程度であるか確認することである。摂取している母乳・人工乳の量,離乳食のカロリーの概算を行い,月齢や体重に見合っているか検討する。

❸参考として,厚生労働省から提示されている乳児の栄養摂取基準量を表2に示した。

【2】臨床所見:栄養障害における代表的な臨床所見は成長曲線により認められる体重増加不良,成長障害である。

❶体重増加不良

複数回の体重測定で基準値の5パーセンタイルを下回った場合,体重増加が減退してパーセンタイル値表記の成長曲線のパーセンタイル線を短期間で2本横切るような成長の変化を示す場合に判断される。

体重増加不良の際に表3に示すような臨床症状を呈する場合には基礎疾患を考慮する必要がある。

❷栄養障害では体重増加不良以外に診察所見で異常を認めないこともあるが,重度の栄養障害では脱毛,皮下脂肪や筋容量の減少,皮膚炎を伴うことがある。

【3】発展途上国ではkwashiorkor(蛋白質を中心とした短期間の栄養障害,腹

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