診療支援
診断

ムコ多糖症
††
Mucopolysaccharidosis (MPS)
澁谷 与扶子
(大阪大学大学院小児科学)

 ムコ多糖症(MPS)はライソゾーム病の1つで,ライソゾーム酵素の欠損によりムコ多糖(グリコサミノグリカン)が全身に蓄積する疾患である。欠損する酵素によりⅠ,Ⅱ,Ⅲ,Ⅳ,Ⅵ,Ⅶ,Ⅸ型の7つの型に分類される(表1)。

診断のポイント

【1】特徴的所見

❶特徴的な顔貌:粗な顔貌(厚い口唇,歯肉肥厚,鞍鼻,巨舌など。Ⅲ型は顔貌異常を伴わない)。

❷広範な異所性蒙古斑

❸硬い皮膚

❹反復性中耳炎,難聴

❺アデノイド

❻鼠径ヘルニア(両側が多い),臍ヘルニア

❼角膜混濁(Ⅱ型では角膜混濁は認められない)

❽肝脾腫

❾骨関節障害:後弯や側弯,関節拘縮。

❿精神運動発達遅滞(Ⅳ型,Ⅵ型ではきたさない,他の型でも重症度によって認められない場合もある)

⓫発育不全:幼児期早期は比較的過成長で幼児期後期より低身長となる。

【2】【1】の所見は疾患ごとに出現頻度が異なる。【1】の所見が認められない型もあるため,各型の所見については成書で確認されたい。

症候の診かた

【1】ムコ多糖の沈着に伴い症状の進行を認めるため,乳児期や幼児期早期には症状が軽微であることが多い。

【2】MPSⅡ型のみX染色体連鎖劣性遺伝であるため家族歴の聴取が有益である(その他は常染色体劣性遺伝形式)。

検査所見とその読みかた

【1】尿中ウロン酸定量

❶上昇を認めることが多い。型によってデルマタン硫酸,ヘパラン硫酸,ケラタン硫酸の上昇パターンに違いがある(エスアールエル社で可能,ただし保険適用外)。

❷年齢が高くなると正常値となることもあるため,尿中ウロン酸定量はあくまで補助所見である。

【2】全身骨X線写真:肋骨のオール状変形,砲弾様指骨,橈骨頭と尺骨頭の変形(Madelung変形)など。

【3】心臓超音波検査:心臓弁膜病変の検索。

【4】頭部MRI:脳室拡大,血管周囲腔の空胞状変化。

【5】耳鼻咽喉科:滲出性中耳炎,難聴,上気道-気管の狭窄。

【6】眼科受診:緑内障,白内

関連リンク

この記事は医学書院IDユーザー(会員)限定です。登録すると続きをお読みいただけます。

ログイン
icon up
あなたは医療従事者ですか?