診断のポイント
【1】「それまでの健康状態および既往歴からその死亡が予測できず,死亡状況調査(death scene investigation:DSI)および解剖検査によってもその原因が同定されない,原則として1歳未満の児に突然の死をもたらした症候群」を乳幼児突然死症候群(SIDS)と診断する。
【2】主として睡眠中に発症し,日本での発症頻度はおおよそ出生6,000~7,000人に1人と推定され,生後2か月から6か月に多く,まれに1歳以上で発症する。3:2で男児に多く,冬に多い。
【3】基礎疾患が存在する場合の突然死については,その疾患で突然に死亡する可能性が高い場合(染色体異常・奇形症候群・脳性麻痺の重症例など)はSIDSと診断しない。
【4】死亡診断書(死体検案書)上の死因は「乳幼児突然死症候群」とし,死因の種類は「病死」とする。間接的にも強く影響を与えたとは考えられない病変は,副所見に加える。
症候の診かた
【1】乳幼児突然死の診断分類は日本SIDS・乳幼児突然死予防学会のものを参照する(表1図)。
【2】医療機関到着時に心肺停止状態で,臨床的情報より明らかな病死(分類のⅡ型)や外因死(Ⅲ型)が否定され(表2図),DSIでその死亡原因が説明できず,かつ,安全な睡眠環境にあり事故による死亡とは考えにくい場合をⅠ型とし,これをSIDSという。
❶Ⅰa型(典型的SIDS)
■生後の成長発達が正常,かつ,同胞や同じ環境で養育されている乳幼児に同様の死亡がない症例で,生後21日以上9か月未満の死亡例が多数を占める。
■剖検所見においても,異常を認めないことが大原則であるが,軽微な奇形(多指症や副脾など)や治癒した治療痕などは問題にしない。
❷Ⅰb型(非典型的SIDS)
■同胞や同じ環境で養育されている児に同様の死亡はあるが,乳幼児殺や遺伝性疾患が証明されない。
■早産など周産期に何らかの異常があったも