診療支援
診断

変換症
Conversion Disorder
金生 由紀子
(東京大学准教授・こころの発達医学)

診断のポイント

【1】運動症状(脱力,麻痺,異常な運動など)や感覚症状(皮膚感覚,視覚,聴覚などの異常)を示すが,その所見が神経疾患に適合しない。

【2】明らかな意識の障害または喪失を伴うてんかん発作に類似するエピソード(心因性非てんかん性発作)も含まれる。

【3】発症にはストレス因および心的外傷体験が関連する可能性がある。

【4】年少の子どもと女性で身体症状化しやすいとされるが,発症のピークは,心因性非てんかん性発作は20歳台,運動症状は30歳台である。

【5】女性で男性の2~3倍認められる。

症候の診かた

【1】診察や検査で得られた所見の一貫性が乏しく,異なる手法で得られた所見同士が矛盾することがある。

❶例えば,運動症状は特定の神経支配領域に対応するものではない。歩行障害が重いわりには筋力低下が軽度で,麻痺のある足にも筋萎縮を認めないことが多い。

❷心因性非てんかん性発作では,瞼を開けようとすると抵抗して強く瞼を閉じる,いろいろな発作のパターンが混じるなどを認める。

【2】器質的疾患の除外を常に心がける必要がある。同時に,鑑別の対象である神経疾患に変換症が併発することもないとは限らないことを念頭におく。例えば,てんかんと心因性非てんかん性の両方を認める患者もいる。

【3】離人感(自らの考え,感情,感覚,身体,または行為について,非現実,離脱,または外部の傍観者であると感じる体験),現実感消失(周囲に対して,非現実または離脱の体験)などの解離症状をしばしば伴う。

【4】美しき無関心(症状の性質またはそれによって引き起こされることに対する無関心)や2次疾病利得(症状によって利益を得たり責任から逃れられたりすること)がかつては変換症に関連づけられてきたが,診断に必須ではない。

検査所見とその読みかた

【1】心因性非てんかん性発作

❶ビデオ脳波で発作時に脳波異常を認めないことを確認する。

❷同時に,診断にあ

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