診断のポイント
【1】臍ヘルニアは出生後臍帯が脱落する際に,臍輪筋膜の閉鎖が不十分であり,腸管が脱出した状態である。
【2】いわゆる“でべそ”である。
【3】臍部に腫大がみられる。腫大は軟らかく腹腔内に内容物(腸管)が完納できる。
【4】腹膜と皮膚には異常がなく,臍部にヘルニア門(臍輪)を触れる。
【5】生後数週以内で出現し,啼泣時に著明となる。
緊急対応の判断基準
【1】まれであるが,嵌頓を起こしたときには,還納が必要である。
【2】臍部が硬く腫大しヘルニア内容が腹腔内に戻らない。
【3】発赤がみられ,痛みを伴う。
症候の診かた
臍部の腫大があり,大きさが変化する。泣くと(腹圧がかかると)大きくなり,静かになると小さくなる(図1図)。
検査所見とその読みかた
嵌頓が疑われる場合には超音波検査で腸管の血流を確認する。
確定診断の決め手
表面は全体が正常な皮膚で覆われている。
誤診しやすい疾患との鑑別ポイント
臍帯ヘルニア(図2図):臍帯内に腸管や肝臓が出ている疾患。生下時からあり,正常な皮膚で覆われていない。また,先天奇形の合併がみられる。
合併症・続発症の診断
【1】ヘルニア嵌頓:臍部の膨隆が固く,容易に還納できない。悪化すると皮膚に発赤がみられる。Richterヘルニアの場合もある。
【2】皮膚炎,皮膚潰瘍:圧迫療法の合併症としてみられる。毎日,テープを交換し,皮膚の状態を観察して,発赤などがみられれば圧迫療法を休む。
【3】ヘルニア嵌頓,腸閉塞,出血:頻度は低いが,圧迫療法の合併症として報告があるので,注意が必要である。
経過観察のための検査・処置
臍ヘルニアは1歳までに80%,2歳までに90%が自然治癒するので,手術は2歳以降に行う。
治療法ワンポイント・メモ
【1】乳児では皮膚が伸展しやすく,大きく皮膚が伸びてしまうと自然治癒しても醜形となるため,圧迫療法が行われている。
【2】圧迫療法は臍ヘルニアを還