臍輪を通って腹腔内臓器が腹膜と皮膚に覆われて脱出する疾患であり,主訴としてはいわゆる“でべそ”とよばれる臍突出症状である。
診断のポイント
【1】立位,腹圧,咳などで臍部が膨隆する。
【2】膨隆部は皮膚に覆われている。
【3】超音波,CT,MRIで臍部の腹壁の欠損像,脱出した大網,腸管が観察される。
【4】ヘルニア内容が還納された場合,臍部にヘルニア門が確認される。
緊急対応の判断基準
【1】局所の疼痛がない場合でも手術適応があり,すべて外科医へ紹介する。
【2】局所の圧迫や固定は必要ない。丸めたガーゼなどを当て腹圧を納めることは不可能であり,臓器の損傷や長期の圧迫で皮膚の循環障害を起こした例もある。
【3】疼痛があり,臥位で腹圧を解除しても還納しない場合は嵌頓性臍ヘルニアを疑う。用手還納術を試みてもよいが,すみやかに外科医へ紹介する。
症候の診かた
【1】臍部の膨隆:腹圧がかかった状態での膨隆であり,腹圧が解除されれば還納され膨隆は消退する。
【2】反跳痛・筋性防御・腸蠕動音消失:嵌頓症状における腸管虚血の際によくみられる。
確定診断の決め手
【1】ヘルニア部の腫瘤およびヘルニア門の確認が重要である。ヘルニア内容が還納された場合,指を挿入してヘルニア門を触知する。
【2】非還納性で嵌頓状態になると疼痛は必発で,嘔気・嘔吐・腹部膨満などの絞扼性イレウス症状を呈する。
誤診しやすい疾患との鑑別ポイント
【1】腹壁瘢痕ヘルニア
❶手術瘢痕が存在する。
❷手術歴の聴取。
❸腹腔鏡下手術でのポートサイトヘルニア:臍部を切開しカメラの挿入孔,検体の摘出孔とすることが多く,臍部での小型の腹壁瘢痕ヘルニアとなる。
【2】臍部の良性腫瘍
❷腹圧と関係なく存在する。
❸自覚症状に乏しく,皮膚表面は滑であることが多い。
【3】臍部の悪性腫瘍
❶腹圧と関係なく存在する。
❷皮膚に黒色,赤黒色などの色調変化。
❸隆起