診断のポイント
【1】頻度は鼠径ヘルニアのうち約15~30%程度である。
【2】外鼠径ヘルニア同様に男性に多い。
【3】外鼠径ヘルニアに比べ,高齢者に多くみられる。
【4】通常は立位にて膨隆して,臥位にて消失する。
緊急対応の判断基準
【1】鼠径部の膨隆が戻らなくなり(嵌頓),痛みが強く皮膚の色調変化がある場合は緊急手術の可能性があるため専門医にコンサルトが必要である。
【2】整復ができたとしても経過観察入院が必要である。
症候の診かた
【1】立位もしくはいきみなどで腹圧がかかると鼠径部が膨隆し,腹圧がかからなくなると膨隆が消失する。
【2】膨隆は鼠径靱帯(恥骨結節と上前腸骨棘を結ぶライン)の頭側から始まる。
【3】体表からヘルニア門に指を入れると,下腹壁動静脈の内側にヘルニア門が位置する。しかし多くの場合は診察における理学的所見のみで内鼠径ヘルニアと診断するのは難しい。
検査所見とその読みかた
【1】内(直接)鼠径ヘルニアは日本ヘルニア学会の分類ではⅡ型に分類され,ヘルニア門の大きさや,鼠径管後壁との位置関係でさらに分類されている(膀胱上,限局型,びまん型)。
【2】うつ伏せで腰を浮かせた状態のように病変部膨隆させた状態でのCTで,下腹壁動静脈との位置関係で内・外鼠径ヘルニアの鑑別ができる。また膀胱ヘルニアの合併なども鑑別できる。
【3】嵌頓時は造影CTにて嵌頓腸管の造影効果の有無や周囲に液体貯留がないかを見る。
確定診断の決め手
CTにて下腹壁動静脈の内側からヘルニアが出ていれば内鼠径ヘルニアと診断できる。
誤診しやすい疾患との鑑別ポイント
【1】外鼠径ヘルニア(→)
❶下腹壁動静脈の外側にヘルニア門を認めることで診断ができる。
❷しかし,前述の通り術前の診断が困難であることが多い。
【2】膀胱ヘルニア
❶腹腔鏡の腹腔内観察でも,診断ができないことが多い。
❷腹圧をかけた状態でCT撮影を行うと診断できる。
【3】大腿