診断のポイント
【1】比較的若年者に多い(25~65歳)。
【2】急性発症の肛門痛。
【3】肛門縁に新しく形成された腫瘤(皮下血腫)。
【4】便秘や硬便。
緊急対応の判断基準
【1】激しい肛門痛がある場合:消炎鎮痛薬の投与や外科的処置を考慮する。
【2】出血を認めた場合:止血が得られない場合には外科的処置を考慮する。
【3】感染症(膿瘍形成)を合併した場合:抗菌薬の投与や外科的処置を考慮する。
症候の診かた
【1】肛門痛:急性発症する激しい肛門痛を呈することが多い。
❶外痔静脈叢のうっ血により急性に血栓を生じ,局所内圧の上昇により発生後1~4日をピークとする疼痛を訴えることが多い。
❷ただし,違和感程度で疼痛がない場合もある。
【2】肛門縁の腫瘤:硬便の排泄や激しい運動,多量の飲酒後などに新しくできた肛門縁の有痛性皮下腫瘤,腫脹,脱出を呈する。
検査所見とその読みかた
肛門・直腸診:肛門縁に有痛性あるいは触れると痛い暗青色の皮下腫瘤を認める(図1図)。
【1】腫瘤が緊満している場合には,皮膚の血流障害を呈することがあり,びらん形成を認めることがある。
【2】場合により出血を認めることもある。
確定診断の決め手
【1】急性発症した肛門痛。
【2】肛門縁の有痛性腫瘤。
【3】血腫(血栓)である。
誤診しやすい疾患との鑑別ポイント
【1】内痔核や混合型痔核(外内痔核)の脱出,肛門周囲膿瘍あるいは肛門の黒色腫とは異なるので注意が必要である。内痔核は肛門粘膜に被覆されており,肛門周囲膿瘍はやや肛門の外側に発生し色調も異なる。黒色腫では比較的長い病歴を呈することで鑑別できる。
【2】嵌頓痔核(→)は,全周性の血栓性外痔核と鑑別を要する。
確定診断がつかないとき試みること
肛門周囲膿瘍との鑑別が困難な場合には,外科的切開を加えることも診断・治療の一助になる。
治療法ワンポイント・メモ
治療には保存的治療と外科的治療がある。どちらを選択す