診断のポイント
【1】肛門上皮に生じる裂創である(図1図)。
【2】肛門疾患のなかでは,男性では痔核・痔瘻についで3番目,女性では痔核についで2番目に多い疾患である。
【3】20~50歳台に好発,女性に多い。
【4】排便時の強い疼痛と少量の出血が特徴。
【5】慢性便秘(硬便)を伴うことが多い。
症候の診かた
【1】疼痛:最も特徴的な症状で,排便時に生じる強い疼痛が特徴的である。排便後もしばらく持続することが多い。
【2】出血:ないか,あっても少量で紙につく程度のことが多い。色は鮮やかである。
【3】便秘:慢性便秘の人に多くみられる。硬い便の排出がきっかけで発症することが多い。
検査所見とその読みかた
【1】直腸指診:疼痛を訴えるのが特徴である。肛門管の緊張は強いことが多い。疼痛により直腸指診ができないこともある。
【2】肛門鏡:裂肛のほとんどは後方正中,前方正中の肛門上皮に存在する。側方に存在する裂肛はCrohn病に伴う裂肛や潰瘍病変を疑う。
【3】慢性裂肛では裂肛は深ぼれとなり,裂肛の前後に肛門ポリープやスキンタッグを伴う。
確定診断の決め手
【1】排便時の疼痛。
【2】肛門鏡による裂肛の確認。
誤診しやすい疾患との鑑別ポイント
【1】痔核
❶排便時の疼痛は少なく,出血は多めである。
❷脱出を愁訴とすることが多い。
❸肛門鏡診察で痔核の膨隆を認める。
【2】直腸肛門周囲膿瘍・痔瘻(→)
❶疼痛は持続的で排便に関係なく,出血はあまりない。
❷排膿がみられることがある。
❸肛門診察で肛門周囲の腫脹や痔瘻の二次口を認める。
確定診断がつかないとき試みること
【1】疼痛が強くて肛門鏡診察ができず確定診断がつかないときには,鎮痛薬やステロイド含有の痔疾患軟膏を処方して1~2週間経過をみる。
【2】Crohn病が疑われる場合は下部消化管内視鏡検査や小腸造影検査を行う。
治療法ワンポイント・メモ
【1】保存的治療:急性裂肛は痔疾患軟膏や下剤など