診療支援
治療

初版の序




 『今日の治療指針』は,1959年から今日に至るまで,毎年項目と執筆者を全面改訂し,第一線で活躍する医師の最新の治療内容をまとめた実践書である.同書では内科疾患をはじめ様々な領域の疾患を網羅的にカバーしているが,限られた紙面での解説では書き切れない面もあり,そのため各領域に特化した治療指針シリーズも刊行され,それぞれ好評を博しているとのことである.ただ,こと精神疾患に関しては,諸般の事情から,これまで同シリーズでは取り上げられてこなかった.

 しかし近年,精神科医療を取り巻く状況は大きく変化している.精神科領域にも専門医制度が導入され,精神科医は技能を高めることはもちろん,標準的な治療法に対する知識・情報が今まで以上に必要とされる時代となった.時を同じくして,精神疾患ごとの治療ガイドラインも徐々に充実してきており,代表的な疾患については標準的な治療法が確立されつつあるものも少なくない.また,精神疾患患者の急増に伴い,一般内科医・かかりつけ医をはじめ精神科領域以外の医療従事者にも最低限の精神疾患に関する知識が求められつつある.そして,2011年7月の精神疾患の「5大疾患」への“格上げ”は,その診療にあたる医療従事者にさらなる研鑽の必要性を求めていると言っても過言ではない.

 上記のような状況を踏まえ,今回,満を持して『今日の精神疾患治療指針』を上梓する運びとなった.

 本書では,臨床現場で遭遇する精神疾患について,日常的に経験するものはもちろん,比較的まれな疾患についてもできる限り取り上げ,それぞれについて第一線で活躍する300人以上のエキスパートに最新かつ最高の治療法を具体的かつ実践的にまとめていただいている.その結果,項目立ては全23章・341項目に及ぶこととなった.それぞれの項目において,治療指針シリーズの大きな特徴である詳細な処方例はもちろん,検査や鑑別診断,心理・社会的療

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