『今日の治療指針』は,1959年から今日に至るまで,毎年項目と執筆者を全面改訂し,第一線で活躍する医師の最新の治療内容をまとめた実践書である.同書では内科疾患をはじめ様々な領域の疾患を網羅的にカバーしているが,限られた紙面での解説では書き切れない面もあり,そのため各領域に特化した治療指針シリーズも刊行され,それぞれ好評を博しているとのことである.ただ,こと精神疾患に関しては,諸般の事情から,これまで同シリーズでは取り上げられてこなかった.
しかし近年,精神科医療を取り巻く状況は大きく変化している.精神科領域にも専門医制度が導入され,精神科医は技能を高めることはもちろん,標準的な治療法に対する知識・情報が今まで以上に必要とされる時代となった.時を同じくして,精神疾患ごとの治療ガイドラインも徐々に充実してきており,代表的な疾患については標準的な治療法が確立されつつあるものも少なくない.また,