診療支援
治療

統合失調症の疾患概念
concept of schizophrenia
笹本彰彦
(京都大学大学院・精神医学)
村井俊哉
(京都大学大学院教授・精神医学)

◆疾患概念

【定義・病型】

A.代表的な診断基準

 統合失調症の疾患概念は,生物学的観点からは今なお確立されておらず,臨床的症候論に基づく類型概念としての構成にとどまっている.今日,臨床・研究の場で頻用されている操作的診断基準(DSM-5,ICD-10)においても,病因に言及せずに特徴的な症状や機能的側面を評価して診断するプロセスをとり,疾患特異的な生物学的マーカーは見いだされていない.したがってこれらの診断基準は,将来,疾患概念の確立がなされるまでの暫定的な使用にとどまるべきとの見方もある.

 今日の操作的診断基準の代表格であるDSM-5では,統合失調症は「統合失調症スペクトラム障害および他の精神病性障害群」の1つとして位置づけられ,診断基準として以下に示すA~Fの6つの基準をすべて満たす必要がある.

 Aには疾患に特徴的な症状が挙げられている.「①妄想,②幻覚,③まとまりのない発語,④ひどくまとまりのない,または緊張病性の行動,⑤陰性症状(すなわち情動表出の減少,意欲欠如)」.このうち2つ以上の症状が存在し,各症状が1か月間(または治療が成功した際はより短い期間)ほとんどいつも存在する.これらのうち少なくとも1つは①か②か③である.

 Bは社会的機能障害についてである.発症以降の大部分の期間において,仕事,対人関係,自己管理などの面で1つ以上の機能が病前に獲得していた水準より著しく低下している.

 Cは期間についてである.障害の持続的な徴候が少なくとも6か月間存在し,この期間中に活動期の症状(基準Aを満たす各症状)が少なくとも1か月(または治療が成功した場合はより短い期間)存在しなければならない.ただし,6か月の期間には前駆期または残遺期の症状のみが存在する期間も含んでよい.

 DからFでは,統合失調感情障害,精神病性の特徴を伴う抑うつあるいは双極性障害,物質または他の医学的疾患の影響

関連リンク

この記事は医学書院IDユーザー(会員)限定です。登録すると続きをお読みいただけます。

ログイン
icon up
あなたは医療従事者ですか?