診療支援
治療

統合失調症の回復・安定期
recovery/stabilizing phase in schizophrenia
加藤大慈
(戸塚西口りんどうクリニック・院長(神奈川))
平安良雄
(横浜市立大学大学院主任教授・精神医学)

◆疾患概念

【定義】

 回復期や安定期の定義は明確ではないが,急性精神病症状のあと比較的症状が軽減し安定した時期をいう.回復期は急性期から安定期への移行期であり,休息の必要性が強調されることが多い.回復期や安定期は,再発を予防しながら,社会参加を目指し自分らしい生活を作っていく時期といえる.

【病態】

 今なお病態の解明は十分になされていないが,その成因については生物学的な側面と心理社会的な側面の両者から影響を受けていると考えられ,脆弱性・ストレス・対処モデルvulnerability-stress-coping modelが統合失調症の病態モデルの1つとして位置づけられている.生物学的脆弱性については,遺伝的要因,神経発達障害,ドパミン系神経伝達異常や脳内NMDA受容体神経伝達の低下などが影響していると考えられている.特に神経発達障害に関しては,近年では胎生期や周産期だけでなく発病前後にも脳形態の変化の進行があることが示され,早期治療の必要性を示唆するものとなっている.

【疫学】

 有病率についてはおおむね0.5%程度といわれ,時代的影響や性差はあまりないようである.発病危険率は約1%と推測されている.

【経過・予後】

 統合失調症の経過について,古典的には予後不良な破瓜型(Hecker)と予後は悪くない緊張型(Kahlbaum)に分けられる.予後や転帰に関する研究結果は国内外ともに多様で不均一であり,極端な楽観はできないものの,不治の病であるかのような悲観は不必要であるといえる.群馬大学の長期追跡研究では,社会適応度について,自立・半自立の群で50%以上を占めている.残念ながら,再発・再燃率は高く,治療に対するアドヒアランスが大きく影響している.今後,初期介入の戦略や,薬物療法,リハビリテーションの進歩によって転帰はさらに改善する可能性がある.

◆治療方針

A.治療方針の概要

 統合失調症は

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