診療支援
治療

統合失調症における物質・アルコール使用障害
substance use disorders in schizophrenia
長田泉美
(鳥取大学・精神行動医学)
兼子幸一
(鳥取大学教授・精神行動医学)

◆疾患概念

【定義】

 アルコール,カンナビス(大麻)などの乱用や依存からなる精神作用物質使用障害(以下,物質使用障害)は統合失調症において高い併存率を示す.

【病態・病因】

 統合失調症では,腹側被蓋野から辺縁系や前頭前皮質に投射するドーパミン系を最終経路とする報酬系の機能低下が想定されている.このため,ドーパミン濃度を上昇させる精神作用物質に依存しやすい可能性がある.

【疫学】

 統合失調症における物質使用障害の生涯有病率は40%以上で,一般人口の約3倍と推定されている.併存しやすい因子として男性,独身,若年などが挙げられている.

【経過・予後】

 事故および死亡のリスクも高く,社会的転帰は不良である.

◆診断のポイント

 物質使用歴に関する情報を収集し,評価する.自己治療目的で使用する場合があり,対処行動も確認する.

◆治療方針

A.治療方針の概要

 薬物療法,心理社会的療法,生活支援を統合して提供することが望ましい.

B.薬物療法

 高力価の定型抗精神病薬は,報酬系のさらなる機能低下をもたらし,物質使用を悪化させる可能性がある.よって,D2受容体遮断作用が弱く,物質への渇望を軽減するエビデンスのある非定型抗精神病薬〔オランザピン(ジプレキサ),クエチアピン(セロクエル)〕が推奨される.陽性症状のコントロールが困難な場合は,リスペリドン,アリピプラゾールへ変更する.服薬アドヒアランスが低いときには,デポ剤の使用も検討する.クロザピンの高い有効性には,通院の義務化など薬理作用以外の要因も考えられる.

[処方例]

下記のいずれかを用いる.


1) ジプレキサ錠(5mg) 1回2-4錠 1日1回 夕食後

2) セロクエル錠(100mg) 1日1.5-7.5錠を症状に応じて2-3回に分けて投与


 アルコール依存と統合失調症の併存では,抗酒薬の併用を考える.2013年に承認されたアカンプロサート(レグ

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