◆疾患概念
自閉スペクトラム症は,「社会的コミュニケーションおよび対人的相互反応の持続的な欠陥」と「行動,興味,活動の限局された反復的な様式」を特徴とする最も代表的な発達障害である.言語発達が著明に障害されるタイプ(自閉症)は人口の0.3%程度であるが,1980年代以降は言語を流暢に用いるタイプ(アスペルガー症候群)に関する認識が高まり,それとともにさらに軽症のタイプまで含めたスペクトラムとしてとらえられることが一般的となった.このように広くとらえられた自閉スペクトラムのすべてが社会生活上の支障をきたしているわけではないため,DSM-5では,上記の特徴があることに加えて何らかの社会生活上の支障が存在することを「自閉スペクトラム症」の診断基準に含めている.
◆診断・鑑別診断のポイント
統合失調症と自閉スペクトラム症とは,経過の点で全く異なる類型概念である.したがって,幼児期以降の発達経過に関す