診療支援
治療

統合失調症と自閉スペクトラム症
schizophrenia and autism spectrum disorder
本田秀夫
(信州大学医学部附属病院・子どものこころ診療部部長)

◆疾患概念

 自閉スペクトラム症は,「社会的コミュニケーションおよび対人的相互反応の持続的な欠陥」と「行動,興味,活動の限局された反復的な様式」を特徴とする最も代表的な発達障害である.言語発達が著明に障害されるタイプ(自閉症)は人口の0.3%程度であるが,1980年代以降は言語を流暢に用いるタイプ(アスペルガー症候群)に関する認識が高まり,それとともにさらに軽症のタイプまで含めたスペクトラムとしてとらえられることが一般的となった.このように広くとらえられた自閉スペクトラムのすべてが社会生活上の支障をきたしているわけではないため,DSM-5では,上記の特徴があることに加えて何らかの社会生活上の支障が存在することを「自閉スペクトラム症」の診断基準に含めている.

◆診断・鑑別診断のポイント

 統合失調症と自閉スペクトラム症とは,経過の点で全く異なる類型概念である.したがって,幼児期以降の発達経過に関する情報が十分に確認できる場合は,それが診断にとって重要な決め手となることが多い.しかし,成人例では経過に関する情報が乏しい場合もあるため,症状における概念の違いを確認しておくことも重要である.

 統合失調症と自閉スペクトラム症との鑑別に悩む症状の1つが,被害関係妄想である.統合失調症の被害関係妄想は,マインド・リーディングのコミッション・エラーが生じた状態である.一方,典型的な自閉症の人たちは,そもそもマインド・リーディング自体をしない(オミッション・エラー).しかし,自閉スペクトラム症の特性が弱い症例はマインド・リーディングを全くしないわけではないため,しばしばコミッション・エラーを呈し,被害関係妄想との区別が難しい場合がある.本人に理解できる筋道で合理的に説明されれば,訂正可能である点で,被害関係妄想と鑑別できる.

 統合失調症における思考障害は,論理的な一貫性に欠けているのが特徴であるが

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