診療支援
治療

軽症うつ病あるいはメランコリー親和型うつ病
mild endogenous depression
大前 晋
(国家公務員共済組合連合会虎の門病院・精神科部長(東京))

◆疾患概念

【定義・病型】

 「メランコリー親和型うつ病」は,2005年に「ディスチミア親和型うつ病」が提唱された際に,その対概念として命名された.それまでは「軽症うつ病」「軽症内因性うつ病」とよばれていた.

 軽症うつ病は,笠原・木村分類(1975)Ⅰ型として知られた病態である.起源はKahlbaumのヴェコルディア・ディスチミアVecordia dysthymia(1863)までさかのぼることができ,HeckerがチクロチミーCyclothymie(1898)として病態記載を完成させている.

 軽症うつ病(日)と,mild depression(英,米)は,多少のオーバーラップがあっても,全く違ったものとして考えなければならない.従来,英米圏でデプレッションといえば,疲労感や身体的不定愁訴を主訴として,かかりつけ医を訪れる病態,あるいは職業上や家庭内の葛藤を主訴として,精神分析医を訪れる病態を意味していた.このデプレッション観が,DSM-Ⅳの「大うつ病性障害」の起源である.

【病態・病因】

 外来で治療可能な「軽症内因性うつ病」である.一過性の軽躁状態を呈することはあっても,基本的には単極性うつ病の経過をとる.経過は双極性障害に比べて反復は少ない.発症年齢は中年期から初老期に多く,性差を特に認めない.

 Tellenbachのメランコリー親和型という,秩序志向性,几帳面,良心性,義理堅さ,強い責任感など,通常適応的とされるパーソナリティのもち主が,転勤,昇進,家族成員の移動,身体的疾患への罹患,負担の急激な増加ないし軽減,生産,居住地の移動ないし改変,愛着する事物あるいは財産の喪失などを契機として発症する.

 身体医学的病因は,不明である.Schildkrautによるアミン仮説は,三環系抗うつ薬tricyclic antidepressant(TCA)が効果を現すという事実に基づいた推

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