診療支援
治療

パニック症(広場恐怖症)
panic disorder (agoraphobia)
貝谷久宣
(医療法人和楽会パニック障害研究センター・代表)

◆疾患概念

【定義・病型】

 原義は不意にパニック発作が発症し,パニック発作に対する予期不安が著しく高い疾病である.パニック発作は経過とともに状況依存性が高くなるが,詳しく病歴をとると予期しない場面でパニック発作を生じており,また,深睡眠期前後の睡眠時パニック発作は約4割の患者にみられる.

 米国流の考えでは,パニック発作のために広場恐怖-パニック発作が起こることを予期し,すぐ助けを求められない状況やすぐ逃げだせない場面を恐れる-が生じるとするが,英国流では広場恐怖が根底にあり,結果的にパニック発作が生じるとする.筆者の臨床経験では後者をとる.DSM-5で広場恐怖が独立した障害となるのはそのような考えが根底にあると考えられる.

【病態】

 筆者の外来患者500人について1998年に引き続いて行った2015年の調査では,初発年齢の平均値は28.34±9.95歳,男性28.8±10.3歳,女性28.0±9.7歳で,17年前と比べると女性だけで2.4年発症が早くなっていた.

 DSM-5ではパニック発作症状は13挙げられており,そのうち3症状は精神症状である.筆者らのわが国におけるパニック発作症状を調査した結果(N=500)では(図1),米国の場合と同じように13症状は最も多く,それ以外に口渇や下肢の脱力といった症状がみられた.17年前と比べると大部分の症状の頻度が低くなっていた.すなわち,パニック発作は軽症化の傾向がみられた.

 広場恐怖は約3/4の患者にみられる.筆者らの調査では,広場恐怖を伴うパニック症では伴わない群に比較して,処方薬剤量が多く,病期が長く,状況性パニック発作症状数が多く,発症時のシーハン不安尺度総得点が高く,初診時の抑うつ尺度が統計的有意に高かった.発症年齢,不安・抑うつ障害および薬物中毒の家族歴,早期離別歴,学歴,結婚歴には有意差はなかった.

 パニック発作が軽快して

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