診療支援
治療

醜形恐怖症
body dysmorphic disorder
宮地英雄
(北里大学講師・精神科)
宮岡 等
(北里大学主任教授・精神科/北里大学東病院・院長)

◆疾患概念

 醜形恐怖症dysmorphophobiaの概念は1986年にMorselliによって提唱された.Dysmorphophobia(dys=abnormal,morpho=shape/structure,phobia=a strong and unreasonable fear)という用語がそのまま示すように,自分自身の身体の形態に関して,その一部または全部が醜い,あるいは奇異な形をしていると訴える症状をいう.米国精神医学会がDSM-Ⅲ-Rを出してからは身体醜形障害body dysmorphic disorderという用語のほうが用いられる傾向にある.わが国では妄想と考えられる訂正不能の確信を有し,統合失調症が疑われるが,他の精神症状や経過からみると統合失調症とはいえない病態であることを強調して,思春期妄想症と一括する疾患群に含めたこともある.

 「醜い,あるいは奇異な形をしているように思うが,それが正しくないかもしれない」と自ら理解している場合を身体醜形障害,あるいは醜形恐怖症,完全に確信している場合を妄想性障害,身体型,あるいは醜形妄想症とよぶ場合もある.DSM-5では醜形恐怖症/身体醜形障害のなかで特定すべきものとして,「病識が十分または概ね十分」「病識が不十分」「病識が欠如した・妄想的な信念を伴う」に分けて,確信に対する病識の程度の評価を求めている.

 醜形恐怖症状は「頭の形がいびつである」「目が小さい」「鼻筋が曲がっている」「顔の形が左右非対称である」などと身体各部に及び,また通常の美醜の表現としてもありうる訴えから,その部位の形態が奇形であるかのように訴える例まで多彩である.醜形恐怖症症例では「外見の異常をもっているせいで自分は人間としての価値がない」のごとく,身体上の欠陥を人格の欠陥であるかのように考えている者が多く,時に希死念慮に至る.関係妄想(念慮)を

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