◆疾患概念
【定義・病型】
抜毛症とは,習慣的に自分の体毛(頭髪,眉毛,睫毛など)を抜くために脱毛巣を生じる疾患である.DSM-Ⅳ-TRやICD-10では衝動制御の障害に分類されていたが,新しいDSM-5では強迫症および関連症群のなかに位置づけられた.抜毛直前の緊張感や抜毛後の満足感や解放感を伴うことがあるが,患者は必ずしも抜毛行為を意識していないこともある.一般には,テレビ鑑賞中や就寝前,読書中,勉強中に何の気なしに抜毛することが多い.抜いた毛を食べてしまうこともあるし,まれな例だが,食べた結果,胃毛石trichobezoarを生じることもある.
【病態・病因】
子どもでは,攻撃的な衝動や寂しさを和らげる手段として子どもが発達させる習癖として理解できる症例も多い.抜毛はウィニコットWinnicott DWのいう「移行現象」の病的な形と考える研究者もある.生地らが示したように,発症時期で分類すると理解しやすい(表1)図.ただし,基本的には症状レベルの診断名であり,背景にある精神病理や脳の機能異常も症例ごとに異なっている可能性がある.双子研究で遺伝的要因の寄与率は76.2%と算定されている.最近は,症候学的類似性や薬物反応性から,強迫性障害に類縁(スペクトラム)の病態と考える立場が有力である.
【疫学】
米国の調査では生涯有病率0.6%という報告がある.また米国の地域調査では,整髪目的以外の抜毛は6.5%,臨床的意義のある抜毛は1.2%に認められ,重症度が増すと女性の割合が増加する.
【経過・予後】
一般に低年齢発症例のほうが予後は良好である.成人期発症例は,他の精神疾患との合併も多く慢性化しやすい.
◆診断のポイント
円形脱毛症との鑑別点は,抜毛症における頭髪の病変部は境界が不鮮明で,形も不整,長さの異なる毛髪が残存しているところである.病変部周囲の毛は容易に抜けない.
抜毛のため体
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