診療支援
治療

変換症/転換性障害
conversion disorder
野間俊一
(京都大学大学院講師・精神医学)

◆疾患概念

【定義・病型】

 1つまたは複数の随意運動機能あるいは感覚機能が損なわれる病態で,身体医学的に説明できないものを,変換症/転換性障害とよぶ.

 変換(転換)症状は,運動性の症状(協調運動障害,平衡障害,麻痺や脱力,嚥下障害,失声,尿閉など),感覚性の症状(触覚や痛覚の消失,複視,失明,失語,幻覚など),けいれん症状(全身けいれん,意識消失発作など)に分けられる.

【病態・病因】

 症状は身体医学的には説明がつかないが,詐病のように意図的に作り出されたものではない.発病前に心理的葛藤に悩んでいるか,心的外傷を体験していることが多く,この病態には心理的要因が深くかかわっていると考えられる.

 変換症/転換性障害は,以前は転換ヒステリーとよばれ,解離ヒステリーとともに「ヒステリー」の一病型と見なされた.このとらえ方はICD-10に反映されて,そこで変換症/転換性障害は「運動および感覚の解離性障害」に分類されている.DSM-5では,身体症状を呈するものは変換症/転換性障害,精神症状を呈するものは解離症群/解離性障害群に分類されているが,両者は併存することが多いため,やはり共通の病態と考えるべきである.

【疫学】

 有病率は,10万人に対して50人といわれる.発症年齢の平均は30歳代だが,20歳代や10歳代などの思春期・青年期にも多くみられる.男女比では,全体に女性が男性よりも多く,特にけいれん症状は女性によくみられるが,それに対して麻痺症状は男性に多い.

【経過・予後】

 精神療法に対して比較的よく反応するが,難治例もある.年齢が若く,病歴が短いと予後はよく,逆にパーソナリティ障害があったり,疾病利得があったり,訴訟が絡んだりすると,予後は不良である.

◆診断のポイント

 変換症/転換性障害を積極的に診断できる指標というものは存在しないため,診断を下すためには,常に総合的な判断が求められる.

 

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