診療支援
治療

慢性疲労症候群
chronic fatigue syndrome (CFS)
吉原一文
(九州大学病院講師・心療内科)

◆疾患概念

【定義・病型】

 慢性疲労症候群(CFS)は,原因不明の強い疲労感が少なくとも6か月以上持続し,その疲労感によって社会生活に支障をきたす疾患である.CFSのうち,感染症が確診されたあと,それに続発して症状が発現した例は「感染後CFS」とよぶ.

【病態・病因】

 CFS患者において神経・免疫・内分泌代謝系の異常が認められることがある.

 CFSの病因や危険因子として遺伝子,感染,心理的ストレス,幼少期の虐待・ネグレクトなどが挙げられている.CFSは,これらの複合要因によるものと考えられている.

【疫学】

 わが国のCFSの有病率は0.3%と推定され,主に20-40歳で発症し,女性が男性の2-3倍多いと報告されている.

【経過・予後】

 完全に回復する割合は0-37%,改善するものは6-63%と報告されている.また,若い患者や精神疾患の合併のない患者の予後はよいという報告がある.

◆診断のポイント

 旧厚生省CFS診断基準試案を用いる.「生活が著しく損なわれるような強い疲労を主症状とし,少なくとも6か月以上の期間持続ないし再発を繰り返す」および「器質的疾患やうつ病などが除外される」ことが認められ,「①微熱・悪寒,②咽頭痛,③頸部・腋窩リンパ節の腫脹,④原因不明の筋力低下,⑤筋肉痛・不快感,⑥軽い労作後に24時間以上続く全身倦怠感,⑦頭痛,⑧腫脹や発赤を伴わない移動性関節痛,⑨精神神経症状,⑩睡眠障害,⑪発症時,主たる症状が数時間から数日の間に出現」のうち8項目以上を満たす場合,または6項目以上に加え「①微熱,②非滲出性咽頭炎,③頸部・腋窩リンパ節の腫大」の身体所見のうち2項目以上を満たす場合,「CFS」と診断する.

◆治療方針

A.治療方針の概要

 治療のゴールは症状の軽減,あるいは症状があってもある程度の活動が可能となることなど,実現可能な目標に設定する.まず,睡眠不足,乱れた食生活,過活動

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