診療支援
治療

作為症/虚偽性障害
factitious disorder (FD)
岡野憲一郎
(京都大学大学院教授)

◆疾患概念

【定義・病型】

 作為症/虚偽性障害(以下,作為症)とは,当人が故意に精神的ないしは身体的症状を作り出したり,症状があると見せかけたり,実際にある症状を誇張したりするが,いわゆる「病者としての役割sick role」ないしは第一次疾病利得を得ること以外に実利を求めないことを特徴とする.作為症は以前からミュンヒハウゼン症候群Münchhausen syndrome(英語圏ではマンチョーゼン症候群Munchausen syndrome)ないしは病院依存症hospital addictionなどの名で知られていた.症状のあり方が,ホラ吹き男爵ともよばれたミュンヒハウゼン男爵と似ていることから,この名前がついたとされるが,DSM-Ⅲ(1980)以降,この作為症factitious disorderという呼称が一般化された.患者は自分の尿に異物を混ぜて検査に出したり,幻覚剤を使用したり,細菌を自らに注射したりするなどの行動により,故意に病気の状態を作り出し,医療機関を訪れるということを繰り返す.時には自らの身体を傷つけることもあり,その意味では自傷行為との関連が問題となる.それらの行動は意図的になされることが本診断の前提であるが,症例によってはそれが半ば無意識に行われる場合があり,身体症状症その他との鑑別が難しくなる.

 作為症の疫学的な特徴については不明な点が多いが,男性の医療関係者に多いという報告もあり,また原因の1つとしてパーソナリティ障害がしばしば指摘される.患者は症状を作り上げることで,強い依存欲求を治療者との間で充足させたいと願ったり,治療者を欺きたいという攻撃性を表現していたりする可能性がある.さらには幼少時の虐待やネグレクトに由来する恨みの感情や,ケアされ育て直されることへの希求が病理に深く関係している場合もある.

【分類】

 DSM-5においては,上述の本来の意味

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