◆疾患概念
【定義・病型】
DSM-5によれば,解離性同一症とは2つまたはそれ以上の,他とはっきり区別されるパーソナリティ状態または憑依状態によって特徴づけられる同一性の破綻である.同一性のそれぞれが,環境や自己に関係し,思考し,知覚する独自の様式をもち,これらの同一性が反復的に行動を統制することから,さまざまな出来事の想起困難が反復される.健忘がなかったり,交代人格が明瞭に区別されていなかったりする場合には「他の特定される解離症」と診断される.
代表的な交代人格としては主人格,幼児人格,迫害者人格,救済者人格,異性人格などがある.主人格とは元来の人格のことではなく,日常生活で主に行動している人格のことである.
◆診断のポイント
統合失調症,パーソナリティ障害,てんかん,物質関連性障害,器質性精神障害などとの鑑別を要する.解離性同一症では交代人格が背景化していることが多く,診断は一般に困難である.体外離脱体験,健忘,幻聴,被注察感,人混み恐怖,夢中自己像視などがあれば解離症を疑う.
◆治療方針
解離性健忘(→)で示した治療の3段階は,解離性同一症においても治療の基本である.入院治療は解離の病態では敬遠される傾向があるが,実際には枠をしっかり作り,安定感や安心を確保する環境を提供できれば,状態は比較的短期間で軽快することが多い.
解離性同一症の患者は不安・焦燥感,抑うつ気分,自傷行為,自殺念慮,不機嫌,衝動性,頑固な不眠,多夢など多彩な症状を呈するため,症例の状態像に合わせて向精神薬を処方する.
[処方例]
知覚過敏や幻覚,強度の不安などに対しては下記1)を,攻撃性や不機嫌,衝動性などに対しては2)を,不眠や多夢に対しては3)または4)を処方する.
関連リンク
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