◆疾患概念
【定義・病型】
DSM-5によれば,解離性同一症とは2つまたはそれ以上の,他とはっきり区別されるパーソナリティ状態または憑依状態によって特徴づけられる同一性の破綻である.同一性のそれぞれが,環境や自己に関係し,思考し,知覚する独自の様式をもち,これらの同一性が反復的に行動を統制することから,さまざまな出来事の想起困難が反復される.健忘がなかったり,交代人格が明瞭に区別されていなかったりする場合には「他の特定される解離症」と診断される.
代表的な交代人格としては主人格,幼児人格,迫害者人格,救済者人格,異性人格などがある.主人格とは元来の人格のことではなく,日常生活で主に行動している人格のことである.
◆診断のポイント
統合失調症,パーソナリティ障害,てんかん,物質関連性障害,器質性精神障害などとの鑑別を要する.解離性同一症では交代人格が背景化していることが多く,診断は一般に困難であ