診療支援
治療

パーソナリティ障害の概念
concept of personality disorders
井上弘寿
(自治医科大学・精神医学)
加藤 敏
(小山富士見台病院・院長(栃木))

【概念】

 パーソナリティは,ある人をその他の人と区別させる,その人独自の考え方,感じ方,行動の仕方,対人関係のもち方として表現される個人の傾向性であり,生来の素質が身体的基盤の変化および環境や体験によって発展したものである.パーソナリティは対人関係に多大な影響を及ぼす.よって,精神障害をもつ人のパーソナリティを把握することは,良好な医師-患者関係を築くうえで肝要である.

 わが国を含め国際的に広く用いられている精神障害の診断分類であるDSMおよびICDは,正常と質的に異なるパーソナリティ障害のカテゴリーが存在するという想定に基づき,カテゴリカルな診断方式を採用し続けてきた.しかし,従来のカテゴリカル方式に基づくパーソナリティ障害の概念には,概念自体の妥当性が疑問視されるような種々の問題-例えば,複数の異なるパーソナリティ障害を併存することがきわめて頻繁であること,同じパーソナリティ障害と診断される人々の間の相違が著しいことなど-が久しく指摘されてきた.このような問題意識が高まるなか,近年,カテゴリカル方式に代わる診断システムとしてディメンショナル方式を採用しようとする機運が高まっている.

 2013年に刊行されたDSM-5では,本体部分である第Ⅱ部に収載されたパーソナリティ障害の診断基準はDSM-Ⅳ(1994)と実質的に同一であったが,ディメンショナル方式を大幅に盛り込んだ「パーソナリティ障害の代替DSM-5モデル」が第Ⅲ部(公式な臨床使用を推奨する前にさらなる研究が必要と判断された評価尺度やモデルを収載した部分)に収載された.最近の研究の動向を踏まえれば,遠くない将来,代替DSM-5モデルを基礎にした診断システムの臨床使用が公式に推奨されるものと予想されるが,公式に推奨される前であっても,代替DSM-5モデルについて理解し臨床に応用する意義は大きいと考える.なぜなら,代替DS

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